日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『コロコロ創刊伝説』
『コロコロ創刊伝説』 第2巻
のむらしんぼ 小学館 ¥583+税
(2017年3月10日発売)
2016年5月の「このマンガがすごい!WEB」オトコ編ランキングで首位に輝き、各種メディアで大反響を呼んだ『コロコロ創刊伝説』の続刊が登場!
第1巻では小学館「月刊コロコロコミック」創刊当時の秘話が語られたが、第2巻では少年誌のトップブランドに躍り出た「月刊コロコロコミック」が、子どものトレンドを取り入れてヒット作を次々と送り出していった経緯が明かされる。
今巻では、80年代半ばに巻き起こったファミコン・ブームが大きくフィーチャーされる。
ファミコンを題材にした『ファミコンロッキー』の誕生物語であったり、高橋名人を起用したメディアミックスの仕掛けなどが描かれる。
今ほどコンプライアンスが徹底されてなく、パロディに関して寛容だった80年代の空気感が見事に再現されている。
とはいえ、本作は硬質なノンフィクションというわけではない。あくまで“ガッツな笑いとド迫力!”な「コロコロ」マインドが全編に行きわたっており、児童向けギャグマンガのテンポで小気味よく物語が進んでいく。その意味で本作は、のむらしんぼ版『まんが道』というよりは、のむらしんぼ版『ハムサラダくん』といえるかもしれない。
なお、本作では「月刊コロコロコミック」本誌や掲載作品についての秘話が、評伝的に語られるだけではない。
著者のむらしんぼの、同時代人としての目線や、自作品(『とどろけ!一番』)への自己言及も盛りこまれているのが特徴だ。
それがために、作品自体は“ガッツな笑いとド迫力!”のテイストでありながら、当時の熱狂を客観視する視点が読者には担保される。
さらに現在の著者の近況エピソード(「しくじり先生」への出演や、本作の出版部数についてなど)が挿入されるため、のむらしんぼ本人の現在進行形のドキュメンタリーとしての側面も合わせ持つ。
少年誌ならではの“ガッツな笑いとド迫力!”のノリと、還暦を迎えたベテラン作家のペーソス(哀愁)という、本来であれば食いあわせの悪い要素が違和感なく混ざりあっているがゆえに、懐かしネタを題材にしながらも、ただの懐古趣味に陥っていない。
そのバランスの妙味こそが、このマンガならではの独自性である。
「月刊コロコロコミック」が生み出した数々の伝説だけでなく、著者の生きざまもまた、本作を魅力的にしている重要な要素なのだ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama