365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月24日は轟一番と、のむらしんぼの誕生日。本日読むべきマンガは……。
『とどろけ!一番』 第1巻
のむらしんぼ 小学館 ¥340+税
漫画家自身と、作品の主人公の誕生日が同じと設定されているならば、その主人公に並々ならぬ思い入れがあると推測される。
のむらしんぼの『とどろけ!一番』はこの一例だ。児童向け漫画雑誌「月刊コロコロコミック」にて80年代初期に連載され人気を博した「受験格闘技マンガ」である。
著者は、大ヒット四コマギャグ『つるピカハゲ丸』でも知られる。
じつは作者自身、函館ラサール高校から立教大学、と受験戦士らしい人生を歩んでいる。しかし、初連載作『ケンカばんばん』は残念ながら打ち切りの憂き目に遭ってしまった。エリートコースを捨てて漫画家になったからには、自分の得意分野でヒット作を生みたい……そんな願いが、この『とどろけ!一番』の主人公である轟一番の誕生日を本日9月24日、著者と同一にしたのであろう。
ハッピーバースデー!
そのストーリーとは、一見おバカキャラふうの小学生・轟一番が中学受験に向けて、テストで満点かつ速さも競ってトップをつかむべく、書いても減らない特別な鉛筆「四菱ハイユニ」を手に、「答案二枚返し」などの必殺技を駆使して敵と戦う、という奇想天外なものだ。
「合格ラインに達するテクニック」など、実際の受験指導のようなしゃらくさいことはいっさいなし! というより最終目的である中学受験もそっちのけで、ぶっ飛んだテストバトルが繰り広げられる。
のちにボクシングマンガへ唐突に転換したことでも有名なのだが、その後は人気が下降したようだ。
“テストで戦う”独自性を評価した読者が多かったためだろう。
毎日続く勉強も、マンガを介した想像のなかで壮大なバトルに置きかえれば、ただ苦しいものではなくなる。
少子化で子どもひとりあたりの教育への厚みが増したため、中学受験がより身近なものになった今こそ、『とどろけ!一番』は「勉強マンガ」のフロンティアとして再評価されるべきではなかろうか。
ちなみに、現在ののむらしんぼは『コロコロ創刊伝説』にて誕生秘話を詳しく描いており、あわせて読めばこのダブル誕生日を祝いたい気持ちが倍増するぞ!
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。