365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月12日は看護の日。本日読むべきマンガは……。
『小学館文庫 おたんこナース』第1巻
小林光恵(案) 佐々木倫子(画) 小学館 ¥571+税
5月12日は看護の日。
近代看護を築いたナイチンゲールの誕生日にちなみ、看護と看護職の理解を深める日とされる。
看護師のお仕事や舞台裏を描いた作品として『おたんこナース』をおすすめしておきたい。
実際に看護師の経験がある小林光恵の原案・取材がベース。生と死にかかわる深刻な話も織り交ぜつつ、『動物のお医者さん』でも人気を博した佐々木倫子の、リアル調の描きこまれた絵柄と、マンガチックな表現との落差がおかしみをかもし出し、コメディとして読ませてくれる。
主人公・似鳥ユキエは負けず嫌いで熱くなりやすいところもあるが、明るく根性のある新人看護師だ。先輩に叱られ、トラブルを起こしながらも、成長を遂げていく。
看護師は職務の崇高なイメージから「白衣の天使」とも呼ばれるが、それ以前にひとりの人間である。苦手な患者はいるし、仕事をしたくないと思う日もあるのだ。プライベートでは買いものを楽しんだり、酒好きだったりと、普通のOLと変わらない。
ナイチンゲールは「犠牲なき献身こそ真の奉仕」との名言を残している。 ユキエ自身も、当初は「白衣の天使」という表現を好んでいなかったが……? ユキエの奮闘は、看護の仕事をぐっと身近なものに感じさせてくれる。
なお、作中には困った患者も多く登場し、読んでいるとこうはなりたくないと思うものの、いざ病気の時は不安で冷静にふるまえないものだ。それも仕事のうち、と受け止めてくれる看護師のみなさんには、やはり敬意を表したくなる。逆に、プロの看護職でない人こそ、身内の看護などの時に、つい自己犠牲を払いすぎて苦しんではいないだろうか?
正解はないのかもしれないが、する側・される側にとって理想的な「看護の精神」を、『おたんこナース』からも探ってみたい。
<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。