365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月7日はジョエル・ロブションの誕生日。本日読むべきマンガは……。
『Heaven? ご苦楽レストラン 新装版』第1巻
佐々木倫子 小学館 ¥505+税
「ジョエル・ロブション」の名をご存じだろうか。
1945年4月7日、フランスにて誕生し、若い頃から料理の腕を磨き続け、ミシュランガイドで数多くの星を獲得し、母国から数々の勲章を贈られている世界的シェフだ。
その名を冠したレストラン(日本では恵比寿の「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」が有名)や監修したケーキやパンなどの商品も多数あり、「フレンチの皇帝」とも呼ばれる。
そんな超一流レストランや名シェフ監修のお料理には確かに憧れるけれど、フレンチはテーブルマナーも面倒くさそうだし、聞きなれないカタカナ用語が飛びかっているし、なんだか敷居が高そう……と二の足を踏む人がほとんどのはず。
ならば、ジョエル・ロブションと同じジャンルながらその対極にある(筆者は行ったことがないのであくまで推測だ!)崖っぷちフレンチレストランを舞台にした佐々木倫子の『Heaven? ご苦楽レストラン』を読んで、その世界を垣間見てみよう。
どの駅からも遠く、葬儀場の隣で墓に囲まれた最悪の立地にあるフレンチレストラン、その名は「ロワン ディシー(この世の果て)」。
スタッフ陣は、ほかのレストランに勤めていたが愛想に乏しい主人公の伊賀観(いが・かん)をはじめとして、ワインにしか興味のない元銀行マンの山縣、マヌケだが憎めない川合、元牛丼チェーン店長で銭勘定が好きな堤、とスペシャリストにはほど遠いメンツ。
肝心の小澤シェフは腕は確かだが、なぜか勤めた店がつぶれるジンクスに悩み、彼らをスカウトした、わがままだがハッタリで切り抜ける謎の女性オーナーの黒須は、客席で傍若無人に飲み食いするありさまだ。
しかし、なんだか一流店よりも「ロワン ディシー」の方が居心地がよさそう(やはり推測だが)。
不慣れな伊賀たちが、マニュアルや常識で凝り固まらず、フレンチレストランにふさわしいサービスについて右往左往しながら考える内幕は、なかなか味わい深い。
著者は『動物のお医者さん』にて、ハスキー犬のチョビたちの写実的な描写でも評判になったが、料理を描く時もその手腕が発揮されている。背景で心情を表すリアルな動植物やディテールに凝った妄想なども笑いを誘う。
フレンチを楽しんだ気になれる、あるいはいざいく時の入門編になりそう。
ちなみに、日本のジョエル・ロブションレストラングループの経営母体はデリバリーチェーンの「ピザーラ」や「柿家鮨」などと同じ株式会社フォーシーズだ(2016年現在)。案外、親しみやすいかも?
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。