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ファッ!? 太宰治の髪型が、ラッキー池田のゾウさんみたいになっとる!!!! “笑われて、笑われて、つよくなる”ヘアスタイル公開。【週刊「このマンガ」B級ニュース】

2015/11/17


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「太宰治のアバンギャルドなヘアスタイル」について。


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『若いうちに読みたい太宰治』
齋藤孝 筑摩書房 ¥780+税
(2009年5月9日発売)

な、なんだこの髪型はッ!?
“俺たちのオサム”こと太宰治の髪型が、とんでもないことになってるぞッ!!

話題のもととなったのは、斎藤孝『若いうちに読みたい太宰治』(ちくまプリマー新書)に装丁されたオビである。
紋付を着てにこやかに微笑むオサムの画像が切りぬかれているのだが、背景と髪の境界を大幅に間違えて処理したため、オサムの髪型がまるで取っ手付きの尿瓶(しびん)か、宇宙戦艦ヤマトの波動砲のようになってしまっていたのだ!
なにしろオサムといえば、落書き(似顔絵)やサインの練習をしたノートが公開されたり(旧制弘前高校時代の修身ノート)、芥川賞選考委員会だった佐藤春夫への“芥川賞ください”手紙が公開されたりと、続々と“黒歴史”があばかれ続けており、今回の騒動を含め、没後65年が経過した現在でもわれわれの心をざわつかせてくれる希有な存在だ。

学生時代の中二病的なエピソードとか、39年の生涯で通算5~6回の自殺(狂言含む)遍歴とか、ヘンな髪型に切りぬかれても色あせないイケメンぶりとか、なによりも作家としての卓越した独自性とか、とにかくオサムは「愛され要素」の塊のような存在といえる。
そのためオサム作品は何度もマンガ化されているが、じつはオサム個人がフィーチャーされたマンガ作品もかなり多い。
オサムの魅せた様々な側面は、どのようにマンガ的に表現されてきたのか?

いろんなオサムがあるんだなあ、いろんなダザイがあるんだなあ。
どんどん出てこい はたらくオサム!

あんまり「オサムオサム」言っていると(マンガの)神様に怒られそうなのでここらで控えるが、要するに今回は文豪・太宰治が登場するマンガの特集だ。

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『ンダスゲマイネ。 太宰治蒼春篇』
楠木あると 講談社 ¥590+税
(2009年6月17日発売)

太宰といえば、やはり青年期の「放蕩」と「心中」の印象が強い。
そのあたりの史実を物語化したのが、楠木あると『ンダスゲマイネ。 太宰治蒼春編』である。

実家から仕送りをもらって生活をしているのに故郷・青森からなじみの芸妓を呼びよせたり、最初の心中未遂をしたり、悪友たちと飲み歩いたり……。
そんな「若気の至り」の数々をこれでもかと畳みかけてくる。「若気が至るにもほどがあるだろう」とツッコミたくなること請けあいだ。

タイトルの「ンダスゲマイネ」とは、太宰作品の『ダス・ゲマイネ』(ドイツ語の『Das Gemeine「= 俗っぽさ」』と津軽弁『んだすけまいね』「=そんなだからダメなんだ」の音をかけている)に由来する。
太宰のクズでダメ人間なエピソードを扱う本作にはピッタリのタイトルだが、それでいてなぜ太宰が愛されてきたのか、その「愛され力」をバッチリ表現しているところがポイントだ。


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『小学館文庫 おたんこナース』第1巻
小林光恵(案) 佐々木倫子(画) 小学館 ¥571+税
(2002年9月発売)

太宰のパブリック・イメージに振りまわされるのは、佐々木倫子『おたんこナース』(原案・取材:小林光恵)の主人公・似鳥ユキエである。

入院してきた患者が太宰にそっくりであったため、高校時代に太宰に没頭したユキエは、患者(佐藤康男)に太宰のイメージを勝手に重ねあわせてしまう(文庫版1巻カルテ2「もしや あなたは…」)。
現存する写真そっくりの太宰モドキが動くのは、なんかそれだけでギャグとして成立しているので、なんかズルい。そしておもしろい。


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『文豪ストレイドッグス』第1巻
朝霧カフカ(作) 春河35(画) KADOKAWA ¥560+税
(2013年4月3日発売)

こうした太宰のパブリック・イメージ(すぐ死にそう)のエクストリーム進化形ともいえるのが、『文豪ストレイドッグス』(原作:朝霧カフカ・作、春河35・画)だ。

太宰や中島敦、芥川龍之介といった文豪を擬人化したアクション作品で、異能集団「武装探偵社」に所属する各キャラ(文豪がもと)は異能力を駆使してバトルする。
太宰の異能は、なんと「人間失格」。相手の異能に触れると、その異能を無効化するという、能力バトルマンガではジョーカー的な扱いともいえるチカラだ。

「自殺嗜癖(マニア)」な太宰は様々な方法で自殺を試みるが、それでも本人のキャラクター性はマイペースで、つねに笑顔を絶やさない。このあたりに太宰本人の「モテ要素」が反映されているのだろう。
中原中也(キャラ)と仲が悪いという設定も、文学マニアにはクスッと来るポイントだ。
檀一雄『小説 太宰治』で書かれた中原と太宰の喧嘩(というか中也の絡み酒)における太宰は、かなり萌え度が高いので一読の価値アリ。

ちなみに『文豪ストレイドッグス』は2016年にはアニメ放映が決定しており、今注目の作品でもある。


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『太宰治短編集 津軽』
太宰治(作) 山本おさむ(画) 小学館 ¥1,238+税
(2011年7月29日発売)

最後に紹介するのは、山本おさむ『太宰治短編集 津軽』。

これは太宰個人を描くものではなく、太宰作品の短編をマンガ化したものである。
本作で扱うのは『カチカチ山』(『お伽草紙』より抜粋)、『葉桜と魔笛』、『富獄百景』、『津軽』の4編だ。
太宰といえばどうしても晩年の『斜陽』や『人間失格』が注目されがちだが、美知子と結婚した前後から戦中まで、いわば太宰が“職業作家として”もっとも精神的に安定して作品を生み出していた時期の4編である。

それを人情ものを描かせたら天下一品の山本おさむが描くので、一般的に「太宰治」と聞いたときにイメージするどこか浮世離れした感覚ではない、等身大の人間の物語が存在感を持って迫ってくる。
太宰治と山本おさむ、Wオサム・コラボで、あたらしい太宰の魅力に気づくかも!?

なお、『カチカチ山』と『富獄百景』は、斎藤孝『若いうちに読みたい太宰治』でもとりあげられている作品だ。

いろんなオサムを見てきたけれど、太宰が現在に生を受けて、ヘンな髪型がネットで拡散しているなんて知ったら、自殺しちゃうかもしれない。なのでみなさんも、他人の髪型イジりはホドホドに。
といったところで、今回はこれまで。
“グッド・バイ!”



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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