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『ライラと死にたがりの獣』 第1巻 斯波浅人(作) 斉田えじわ(画) 【日刊マンガガイド】

2017/05/12


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ライラと死にたがりの獣』

  
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『ライラと死にたがりの獣』 第1巻
斯波浅人(作) 斉田えじわ(画) KADOKAWA ¥580+税
(2017年4月4日発売)


ライラの16歳の誕生日。彼女の父と母は、マフィアに殺された。
実行犯は、大きな角の生えた亜人のアーロン。
マフィアに飼われ、暴力だけを教えこまれていた殺人兵器のような存在だ。

アーロンは、怯えるライラにいう。
「ぼくを殺して てんごくにつれてって」
「きみはぼくの 青いひとみの天使なんだ きみだけがぼくを てんごくにつれてってくれるんだもん」
彼が唯一読んでいた本に登場する、青い瞳の天使に、ライラを重ねた。

人間がマジョリティ、亜人がマイノリティの世界での、差別と生命の問題を描く。
亜人たちは、病院に行くにも、食事をするにも、こそこそしている。
まるで人間に対して、自分たちがいるのが申し訳ない、と感じているかのようだ。
人間のなかには、亜人たちをさらい、労働力や娯楽にあてていた、非人道的な行動をとる者もいるらしい。

ライラにしてみたら、アーロンは「ぼくを殺して」なんていわれなくても殺したい、親の仇だ。
ただ朴訥(ぼくとつ)とした彼は本当に何も知らない。感情すらもない。
今まで冷酷な扱いを受けてきて、そして今もその姿のせいで怯えられている。
彼もまた、差別と暴力の被害者だ。

人間側にも亜人側にも、公平であろうとする人が登場している。
各々が“個”の違いを受け入れ、どう動くか。“差別”は歴史と社会のせいで起きるだけではない、自分たちが相手のことを考え、行動を選択することにも委ねられている。

アーロンの知識は今はゼロに近い。たくさんの人間を殺してきたことは、許されることではない。
ただ、ライラとともに行動し、経験を重ねることで、感情が芽生えてくるはずだ。
その時、彼がまだキラーマシンでいるのか、情に厚い、人を差別しない存在になるのかは、今はわからない。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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