365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月21日は野口英世の命日。本日読むべきマンガは……。
『栄光なき天才たち』 第4巻
伊藤智義(作) 森田信吾(画) 集英社 ¥619+税
財布のなかに、たとえ諭吉のいない日はあろうとも、こちらの御仁が入っていないとかなり寒い……てゆーか不安だよね……。
第二次世界大戦後に発行が開始された日本銀行券・千円札に、日本武尊(やまとたけるのみこと)、聖徳太子、伊藤博文、夏目漱石に続く5代目肖像として採用されている“かの御仁”とは……そう、野口英世だ。
2004年に発行が開始された現行千円札の野口英世の肖像は、時の財務大臣・塩川氏によれば「学術重視、男女共同参画、社会の推進」などを視野に入れ、日本の科学技術をアピールし、世界に認められるよう願いをこめ、科学者・野口英世にスポットがあたったという。
加えて、紙幣の肖像画には模造されにくいヒゲとシワがあることが求められ、この条件にぴったりだったのも理由なのだそうだ。
さて、1928年5月21日は、そんな野口英世が亡くなった日である。
野口英世といえば、いわずもがな、梅毒や黄熱病の研究で知られる偉大な細菌学者だ。
今日おすすめする『栄光なき天才たち』は、歴史に残る偉業を成し遂げながらも、数々の苦難に苛まれ、ついに栄光を手に入れることが叶わなかった天才たちを描くノンフィクション・コミックの金字塔だ。
第4巻には、幼い頃から勤勉に学問に励み、自ら手に負った障害の手術をきっかけに医師を志した野口英世編が収められている。アメリカにわたって、ロックフェラー財団のもと数々の論文を発表、梅毒、小児麻痺、狂犬病などの研究で、次々に成果をあげていく野口。やがて野心に燃えた彼はさらに黄熱病へと挑むのだが……。
彼の野望と挑戦、そして苦難の道のり、また野口英世編のみならず、障壁に苦悩し、活路を見いだそうともがく天才たちの姿は、胸に迫ること間違いなし。
ちなみに、本作でも描かれてはいないが、多くの功績を残した彼は、一方では借金を重ねて遊郭に出入りするなど自堕落なところもあったりして、外伝もなかなか豪胆な人物なので、本作のみならず、様々な伝記・物語を併せて読んでみてもおもしろいだろう。
また、本作『栄光なき天才たち』の一部はアニメ化され、アニメで描く本格ドラマと現在進行形のドキュメンタリーでスポーツの魅力を伝える『“栄光なき天才たち”からの物語』として、3月25日よりNHK BS1で放送中だ。
小野大輔や潘めぐみといった豪華声優陣を起用し、不遇の天才アスリートたちに迫る話題作、こちらもお見逃しなく!
<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。