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『ニュクスの角灯』 第3巻 高浜寛 【日刊マンガガイド】

2017/05/17


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ニュクスの角灯』

  
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『ニュクスの角灯』 第3巻
高浜寛 リイド社 ¥997+税
(2017年4月6日発売)


明治時代、開国からしばらく経った長崎にある輸入雑貨店“蛮”。
『ニュクスの角灯(ランタン)』は、この“蛮”を中心に、店主の小浦百年(こうら・ももとし、通称モモ)と、“触ったものの過去や未来の持ち主がわかる神通力”を持つ美世(みよ)を描く作品。

仕入れのためといってパリに支店を出したモモは、起立工商会社の黒川一真(くろかわ・かずま)と出会う。
黒川は、モモよりも先にパリで店を出していて、宮内省お墨付きの作家を多数抱えるライバルなのだが、じつはモモにとっては恋敵にもなるようで……。

一方、自分のモモへの気持ちに気づいた美世。かといってモモを追いかけて出国するわけにもいかないし、ということで、“蛮”本店を新たに店主になった大浦慶(おおうら・けい)さんたちと切り盛りすることに。
英語を覚えて、海で行方不明になった父親を探しに行きたいという新入店員の民平(みんぺい)くんも加わり、長崎もにぎやかな感じ。

実在の事件や人物を大胆に織り交ぜながら、激動の時代を彩った様々な工芸品や衣装の美しさや、商人たちの活躍を楽しむことができる。
“パリのお金持ちは素朴なものも好きで、田舎の別荘用にあえて素朴につくった食器を揃えたりする”とか“フランスといえばワイン、という感じがするけどじつはかなりビールも人気だった”とかのうんちくも勉強できるのだけれど、なんといっても登場人物たちがかわいい。
ボンボンだけど本国にかえって親の世話になりたくない黒川とか、髪をおろすとどことなく重い感じになっちゃう美世とか。

かわいいといえば、今回は巻末に、モモの育ての親である岩爺(がんじい)と、若き慶さんの、命懸けの不法出国エピソードも掲載。
何かと必死な若岩爺もいいが、じゃじゃ馬お嬢のお慶さん!このまま長編を描いてほしくなるくらいおもしろい。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn
Twitter:@n11books

単行本情報

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