日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『舞妓さんちのまかないさん』
『舞妓さんちのまかないさん』 第1巻
小山愛子 小学館 ¥600+税
(2017年4月12日発売)
ダンジョン×グルメ、ヤクザ×グルメ、アイヌ×グルメ等々、次から次へと異色作が登場するグルメマンガの世界。
『舞妓さんちのまかないさん』は、タイトルどおり舞妓×グルメの組みあわせで送る作品だ。
舞台となるのは、京都の花街で華やかに舞う舞妓さんたちが、集団生活を営む「屋形」。浮き世離れした舞妓さんたちも、ここに戻れば普通の女の子であって、プリンを取りあったり、今朝はご飯じゃなくてパンがいいとダダをこねたりする。
そんな「屋形」でまかないさんとして働くことになった16歳の少女「キヨ」の物語が本作。
「花街」という異世界に住む少女たちも、意外と普通の女の子だったり、でも「帰る家を思い出させるのは御法度」とカレーを食べることは厳禁だったり。そもそも16歳ですでにプロとして働いているって時点で、やっぱりすごい。
そんな「意外と普通」だけど「やっぱり異世界」という「舞妓さんち」の日常が、料理を軸に、穏やかなテンポで描かれる。
「神は細部に宿る」という言葉を地でいく背景の描きこみも見どころ。
キヨの働く台所の、いかにも年代物な花柄の鍋とか、なんか由来がありそうな鉄器の湯沸かしとか、昔ながらの給湯器とか、出てくる小道具1つひとつに歴史やドラマがありそうで、ページをめくるのが惜しいくらいだ。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas