日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、
『珈琲店タレーランの事件簿 心を乱すブレンドは』
『このマンガがすごい! comics 珈琲店タレーランの事件簿 心を乱すブレンドは』 第1巻
岡崎琢磨(作) 峠比呂(画) 宝島社 ¥630+税
(2017年5月24日発売)
バリスタで、名探偵の切間美星(きりま・みほし)が活躍する人気ミステリ「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズ。そのコミカライズ第3弾『珈琲店タレーランの事件簿 心を乱すブレンドは』第1巻が刊行された。
今回、美星はアオヤマとともに“関西バリスタコンペティション(KBC)”という競技会で発生したトラブルに挑む。
KBCは、一昨年の第4回大会から1年おいての開催である。1年間の空白は、前回大会でなんらかのトラブルがあったことをうかがわせる。
美星は、今回初めて予選を突破して、出場となったわけだが、ほかの出場者は手ごわそうだ。
前回優勝者の勝気そうな美女・黛冴子(まゆずみ・さえこ)。
前回出場者で、マジックを生かしたパフォーマンスが得意な石井春夫。
5回連続して本選出場の実力者・苅田俊行(かんだ・としゆき)。
美星似のかわいらしい外見ながら、第3回、第4回連続準優勝の山村あすか。
そして、初出場ながら、常にヘッドフォンをしてマイペースな雰囲気を醸し出している丸底芳人(まるぞこ・よしと)――といった5名がライバルとなる。
そうした出場者に、過去3連覇をなし遂げた、カリスマバリスタ・千家諒(せんけ・りょう)が名を連ねていないことが、美星には不審に思えるのであった。
KBCは2日間にわたって行われるのだが、初日にトラブルが発生する。
石井が、必勝を期して、特注の容器にビーベリー(香り豊かな稀少な豆)を詰めていたのだが、そこに不良豆が混入されていたのだ。
前日のリハーサルの際には異常はなく、その後容器は施錠された準備室で保管されていた。犯人は、どのようにして不良豆を混入したのか?
そして、エスプレッソに続く、コーヒーカクテルの競技の際にもトラブルが発生する。
石井がカクテル用に準備した塩を入れた小瓶に、胃薬が混入されていたのだ。
この時には、昼休憩の間に準備室を見張っていたアオヤマに容疑がかかる。
そして、美星は自分の(?)ワトソン役であるアオヤマに対して、ある衝撃のひと言を告げるのだが……。
はたして、KBCでの混入事件の真相はいかに?
また、憧れの大会で美星は優勝できるのか?
第2巻では、前回大会のトラブルの鍵を握る千家諒が登場してきて、物語は新たな展開を見せるので楽しみである。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2017本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。