日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ブラックリリィと白百合ちゃん』
『ブラックリリィと白百合ちゃん』 第1巻
鳳まひろ 少年画報社 ¥545+税
(2017年4月10日発売)
厳格で規律を尊び、大和撫子を育成するとされていた伝統ある女学校。
ところがいざ入学してみると、女の子同士学校中でイチャイチャどころか性行為も行っている、自由すぎる風紀の学校だった。
エロ分多めの百合物語。
“普通”とはなんなのかをテーマに描かれる。
百園優凛(ももぞの・ゆり)が入学した学校は、女の子カップルだらけ。
なかでも、ルームメイトでまさかの学園理事長であるリリィ・マリーナは、先輩女子生徒を愛玩動物としてはべらせる強者。
優凛の頭はクラクラ。
リリィはこの学校で、自分がヒールになることで多くの生徒に手を差し伸べ、自由で楽しい学校をつくりあげた救世主。同時に嫌われ者。
そんな彼女を見て、正義感の強い優凛は「リリィが救われてない!」と訴える。
そこで出した彼女の提案は、自分が彼女の恋人になる、というものだった。
「他人との差異を間違いで片付けてたら 世界は間違いだらけよ」というリリィの発言は、作品全体に響いている。
間違いなくこの作品で描かれる少女たちの行動は、行きすぎている部分が多い。礼拝堂内をヤり部屋にするのは、ちょっと。
ただ、頭ごなしに「普通じゃない」といいがちな優凛に、リリィはストップをかける。
それぞれの持つ感情や思想を理解したうえで、「普通」「間違い」といわず向き合う必要があるはずだ。
優凛はリリィといっしょにいることで、たくさんの場面で視野を広く持ち、価値観の違いに寛容になった。
リリィは厳しく強い一面があるものの、実際はだれにも心を開いておらず、優凛に対しても不安を抱いていたことが明らかになる。
2人が親しくなるにつれ、触れあいたい、と考えるようになるのは自然なこと。“普通”かどうかの問題ではない。
“普通とはなんなのか”論は、優凛視点ではっきりと整理しているのでわかりやすい。
ただ、争いごとはないとはいえ、自由とやりすぎが混沌としている学園内のシーンは多い。
ここをどうまとめていくのかがカギになりそうだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」