日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『カメントツの漫画ならず道』
『カメントツの漫画ならず道』 第1巻
カメントツ 小学館 ¥741+税
(2017年4月12日発売)
WEBを中心に活躍してきた“仮面系ルポ漫画家”カメントツが、マンガ界に斬りこんでいく「ゲッサン」連載のルポマンガだ。
その定評ある取材力によって、製版所や印刷・製本の過程などマンガに関連するお仕事をレポートする、大人の社会科見学にワクワクする。
なんといっても小学館にゆかりの深い漫画家へのインタビューがやはり目をひく。
西原理恵子のお宅訪問でかいま見る豪快ぶりと作家としての狂気、一方でヒットに恵まれたかと思いきや、踊らされて苦しんでいたと語るのむらしんぼ(『コロコロ創刊伝説』もあわせて読もう!)、さらにはあだち充と青山剛昌の2大巨頭と甲子園で高校野球観戦、と驚きのシチュエーションののち、ざっくりと語られる『タッチ』のカッちゃんの件と、それに対する青山氏のリアクションには『名探偵コナン』の著者がそれをいっちゃうの?と、のけぞってしまう。
カメントツ氏の姿勢は卑屈で、担当編集・☆野氏にも新人漫画家としてぞんざいに扱われている。
しかし、じつは取材できわどい質問を投げかけて☆野氏の身を細らせて喜ぶドSな顔も、のぞかせる。
仮面は2面性の象徴なのでは。
ともあれ、このコンビの根の深いドツキ合いは妙に安定感がある。
一風変わった版画調でありつつ読みやすい絵柄、テンポのよい構成に驚かされる。
ルポ漫画家を称するものの、あの「月刊ムー」編集長への取材に先立って“怖い話”について描いたエピソード(これも☆野氏を怖がらせるためだが)はストーリーの見せ方や分析に魅力があり、この先、違った世界も見せてくれそう。
同時発売の『カメントツのルポ漫画地獄』も含め、紙媒体デビューを祝って先物買いしておきたい作家である。
<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。