365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月25日は住宅デー。本日読むべきマンガは……。
『文春文庫 やっちまったよ一戸建て‼』 第1巻
伊藤理佐 文藝春秋 ¥600+税
6月25日は住宅デー。
全国建設労働組合総連合が建設職人の仕事や技能を広く理解してもらうために定めた日である。
そう、彼らはとても有能なのである!
たとえ、施主(家を注文する人)が何も知らなくても、何も考えていなくても……建設職人のみなさん、および不動産屋、設計士、工務店さえしっかりしていれば、家は建つのだ。
伊藤理佐の『やっちまったよ一戸建て‼』は、1坪の大きさも知らない状態から、著者がほぼ「思いつき」で、(結果的に)ひとり用一軒家を建てたおりの爆笑ドキュメントマンガである。時は1999年、世紀末であった……。(つまり『おるちゅばんエビちゅ』が大ヒットした頃?)
土地を紹介した不動産屋さんは資金のアドバイスをしつつ奔走し、設計士さんと別の大手メーカーの間で揺れ動いた著者は女を自覚し(?)、建設職人をまとめる工務店の人は動物好きで、猫優先で相談に乗ってくれて、どうにかこうにか、地鎮祭や棟上げ式などをクリアしていく過程が、猫のツッコミを受けながら記される。
ハードな引っ越しを経て手に入れた自分の城の、住み心地はいかに?
なんせ妙なこだわりにより、トイレが吹き抜けているという驚きの設計なのだ。
しかし、著者は「やっちまった」と銘打っているものの、意外にも後悔していない。これは、ネタになっただけでなく、スタッフの腕前や、家が建っていく過程を見守ることで達成感がえられたから、というのもありそう。
現在の著者は同業者の吉田戦車と結婚し、1女をもうける……と建てた当時にはまったく想像もつかない状況になっており、ひとり用一軒家では手狭になったわけだが、この家のアフターストーリーは『おんなの窓』シリーズでかいま見える。
家とは、建設職人が精魂こめてつくりあげ、様々な記憶を受け継いで建ち続ける、偉大な器なのだ。
ちなみに、「大工さんの喜ぶ差し入れ」などもくわしくレポートしており、このマンガは家を建てたい人への超入門テキストとしても役立ちそうだ。
しかしまあ、トイレはなるべく吹き抜けていないほうがいいかもしれない。
<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。