日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『青猫について』
『青猫について』 第2巻
小原愼司 小学館 ¥630+税
(2017年6月12日発売)
戦後間もない混沌の日本。
“人斬り青猫”と呼ばれる凄腕がいると噂がたった。
上から下まで黒ずくめ、猫みたいにすばしっこい“青猫”の正体は、セーラー服に身を包み、刀を持った少女・瞳子。
一振りで必ず相手を仕留める彼女。ときには手足を刻んだあとに生殺し状態で見捨てるほどの、血も涙もない存在だった。
彼女は、自分の家族を裏切り殺していった、火男(ひょっとこ)の刺青をいれた男たちを探し続けている。
戦後エログロバイオレンスをふんだんに盛りこんだ、カタギじゃない人間たちの血と臓物の物語。
第1巻では復讐譚として話が進められていたが、第2巻になると様子が変わってくる。
表情を変えず火男の刺青の男たちを探しているのは同じだが、エンディングに向かって、切り刻んだ人数が尋常じゃなくなった。
目の前にいて、邪魔なら斬って捨てる。見方によっては、悪人は瞳子のほうだ。
なんせ彼女、なんらかの策を練って狙う相手を追う、とかいっさいしない。
昼間の往来であろうと、ちょっとしたことで相手をすぐに斬る。
姉を探すためいっしょに行動する、傍観者的立ち位置の少女・ノブが「お前と居たらろくなことねぇや」というのももっともだ。
殺人狂の女性・カラスとの出会いから、瞳子の内面が徐々に見え始めてくる。
カラスは何らかの信念を持つわけではなく、楽しんで狩りをしている。
一方瞳子は、一応は復讐という名目で動いているが、終盤彼女の顔はどんどんにこやかな物へと変貌していく。
瞳子は今まで、殺すたびに「主よ 私を呪い給え…」と呟いていた。
しかし、目的を果たした時、恍惚とした表情でこういう。
「主よ—— 感謝します。私がためらいなく人を殺せる人間であることを。」
第6話では、令嬢だった瞳子が人斬りに鍛えられた過去が描かれている。
江戸川乱歩『芋虫』のような月島に指導され、ブタの糞と蛆虫のなか、嘔吐しながら裸足で刀を振るい続ける瞳子。
如実に目が変わっていく様子は、小原愼司作品のなかでも屈指の醜さ・美しさだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」