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『地球戦争』第5巻 小原愼司 【日刊マンガガイド】

2015/02/26


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『地球戦争』第5巻
小原愼司 小学館 \552+税
(2015年2月12日発売)


映画や古典SF小説で有名な『宇宙戦争』をモチーフに、舞台を19世紀のイギリスに移したSFマンガが堂々の完結だ。

繁栄絶頂のロンドンに突如現れた未知の敵、三脚砲台。大英帝国軍を壊滅させ、ロンドンの街を破壊しつくし、そして人間を狩っていく……。

孤児のオリバーは、廃墟となったロンドンで上流階級の娘・アリスと出会う。
生きるためならなんでもするオリバーと、生きるにもモラルは必要というアリスは対立するが、ともに手を携えて逃避行を開始。
多くの大人や仲間からの、援助や裏切りの数々に翻弄されつつも、ついに逃避行を無事完遂させる!

のだが……、SFお得意の派手な宇宙人との戦闘といった要素はあまり前面に出てこない。
本作では宇宙人による侵略というのはあくまでもシチュエーションにすぎず、あくまでも人と人のふれあいや争いがメインとなっているからだ。

最終巻である今巻では、すでに宇宙人との戦いは終結し、「その後」の世界を狙った覇権争いが勃発している。
家族と再会できたアリスと、再会させるという約束を守ったオリバーは、つかの間の平和を女王の居る宮殿で過ごす。

いっぽうで、2人がずっと守ってきた幼い「坊や」は宇宙人。あらゆる人間が坊やの身柄を狙い、新世界の覇者を目指すグレイヴ商会もまた、王女排斥と坊やを狙って三脚砲台を操り迫ってくる。
その時、彼らが決断したこととは……。

人々がそれぞれの生き方を確認する「男前」な展開の最終回。
誰が勝った! 何がどうなった! ということではなく、人がそれぞれの道を歩んでいくすばらしさに心ひかれる物語。
タイトルが『宇宙』でなく『地球』となっているのも、その人間同士が主義主張の違いから戦い続ける様を描いているからだろう。
淡いラブストーリーとともに、人の生き様を堪能しまくりでした。



<文・沼田理(東京03製作)>
マンガにアニメ、ゲームやミリタリー系などサブカルネタを中心に、趣味と実益を兼ねた業務を行う編集ライター。

単行本情報

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