365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
7月18日は広末涼子の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『幕張』 第6巻
木多康昭 集英社 ¥390+税
7月18日は広末涼子のバースデー。1980年生まれだから今年で37歳。
あの広末がアラフォーの季節に突入すると思うと、感慨深いものがある。
あいわらずお美しいことはたしかなのだが、デビュー当時の彼女は“神々しい”という言葉がぴったりハマる、とんでもない美少女だったのだ。
広末は高知県出身(阪神の藤川球児は城北中学校時代の同級生だという)。
1994年、中学生のときにクレアラシルのCMでデビューするが、彼女を一躍お茶の間の人気者に押しあげたのが、1996年にオンエアされたNTTドコモのCM「広末涼子、ポケベルはじめる」だ。
「ルールルルルー♪」と歌いながら画面をじっと見つめる少女が、「お誕生日にポケベル買ってもらった。/さて、だれにベル番号教えようかな」と独白しながらタコの滑り台から駆け下りていくその30秒間に、世の男性陣は釘づけになった。
そして、まさにその当時「週刊少年ジャンプ」で連載を開始したのが木多康昭のデビュー作『幕張』である。
1996年11号よりスタートした本作は、幕張南高校野球部の日常を舞台としながらも、試合のシーンなどは皆無。
塩田鉄人と奈良重雄という2人のメインキャラを中心に、はてしのない青春の無駄行動が繰り広げられる。
本作最大の特徴は「ジャンプ」に掲載されているほかの連載や担当編集者、芸能人といった実在の作品・人物をパロディという名のもとにこすりまくる点。
著作権や肖像権的にギリギリな部分(一部はアウト宣告)を攻めに攻め、読者と業界に衝撃を与えた。
人気絶頂だった広末のネタも当然のごとく随所にある。
第2巻では塩田がおぼれている子どもを助け、その母親に妹を紹介してもらう約束を取りつけるのだが、「芸能人でいうと誰に似てるの?」という質問の答えが「広末涼子かな」。
塩田は「広末涼子、ポケベルはじめる!!」と叫びながら狂喜乱舞する。
ところが、待ちあわせにやってきた自称「広末によく間違えられる」鈴木智恵子は、広末とは似ても似つかぬ赤木キャプテン(『スラムダンク』)似のゴリ系女子。
塩田はすっかりその気になっている彼女を奈良に押しつけるという暴挙に出る。
ところが極度の近眼の奈良は、塩田の画策でメガネをかけずにデートに臨み、あろうことか智恵子が広末そっくりに見えてしまうミラクルが。
以降、彼女は『幕張』の重要キャラクターとなり、数々のトラブルを巻き起こしていく。
智恵子関連以外でも広末ネタは豊富。
ステーキ屋の「SUEHIRO」が「HIROSUE」に変換されていたり、今度は本当に広末涼子そっくりの良子という巨乳キャラが出てきたり。
第6巻の表紙に至っては、ついに智恵子(広末然としたキュートなポーズ)がジャックした。このように『幕張』は、90年代後半に訪れた空前の広末ブームをパッケージした貴重な作品なのである。
あれから21年。
16歳の誕生日にポケベルを買ってもらった広末も37歳。結婚、出産、離婚、再婚、出産と紆余曲折を経て立派な大人の女性になった。それでも清純派オーラはいまだ衰えを見せていないのがすごい。
30代以上の殿方ならば、何年たっても「ヒロスエ」と4文字を唱えるだけで、いつまでも涼やかな風が脳内にそよぐことだろう。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。