365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
7月19日はモスクワ五輪が開催された日。本日読むべきマンガは……。
『ろくでなしBLUES』 第1巻
森田まさのり 集英社 ¥400+税
今日は「モスクワ五輪が開催された日」である。
1980年7月19日、ソビエト連邦(現在のロシア連邦)の首都・モスクワにおいて、五輪が開催された。
これは共産圏の国で開催された初の五輪である。
しかし、日本はこの大会に参加していない。
前年の1979年12月、ソ連はアフガニスタンに侵攻を開始し、冷戦体制のもとでソ連と対立していたアメリカはモスクワ五輪へのボイコットを呼びかけたのである。
日本はこれに同調し、モスクワ五輪への不参加を決めた。
はからずも「スポーツと政治」の関係性が大きくクローズアップされたかたちとなったが、五輪が政治イシューになってしまったことで、当事者であるアスリートたちはあおりを受けてしまった。
のちにロス五輪(1984年)の時に男子柔道の無差別級で金メダルを獲得し、国民栄誉賞を授与される山下泰裕氏は、このモスクワ五輪で初めて代表選手に選出されたが、その実力を大会で示すことはか叶わなかった。
この時山下氏は、ほかの競技の代表選手たちと共同で記者会見を開き、出場できない無念を涙ながらにメディアに訴えたのであった。
このモスクワ五輪ボイコットが作中に出てくる作品が『ろくでなしBLUES』(森田まさのり)だ。
主人公・前田太尊のクラスの担任である近藤真彦は、ボクシング部の顧問でもある。
不良たちの理解者で主人公たちからも慕われており、外見的には元プロレスラーのマサ斎藤にそっくりで、まわりからは親しみを込めて「マサさん」と呼ばれている。
この「マサさん」は、教師になる前はレスリングの選手で、オリンピックの代表には3回も選出された。しかし、いずれも諸事情によって不出場となるが、そのうちの一度はモスクワ五輪の日本ボイコットによるものであった。
この「マサさん」のように、現実の代表選手たちは五輪ボイコットによってアスリート人生を大きく狂わされてしまったのである。
ともあれ、「マサさん」の五輪不出場が語られる回は、シリアスなストーリーが展開する。
人格者「マサさん」の青春時代のエピソードを楽しんでほしい。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama