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今回紹介するのは、『新上海エピキュリアン』
『新上海エピキュリアン』 第1巻
雨ノ森斑葉(作) 伊東七つ生(画) KADOKAWA ¥650+税
(2017年6月15日発売)
魔都・新上海。
美と悪、退廃と快楽に満ちたこの都市で行われる背徳の遊戯――混一(こんいつ)。
たとえば植物と玉(ぎょく)、昆虫と鉱石。
異なるものをかけあわせてつくる、エピキュリアンの楽しみ。
そのなかでも最大の冒涜であり最上に美しいものは、人とものとの混一だ。
無論違法だが、禁じられた美だからこそ人はそれに幻惑される……。
この作品は、どこもかしこも妖しい魅力に満ちている。
華やかかつ美麗な絵で描かれる、凝ったシノワズリの世界。
『新上海エピキュリアン』は、ページをめくるごとに見入ってしまう、細密画のようなコミックだ。
最愛の母を亡くし、多額の借金を残して父親が逃亡。
名家であったフォード家に、ひとり残されてしまった少年、クリス。
広い屋敷のなかでなす術もなく途方に暮れる彼に、借金を肩代わりしてくれるという青年が現れる。
「私は君の友人になるのだから」――ノアールと名乗る隻眼の美術商人は、屋敷で新たな商売を始める。
豪奢で淫靡な空間と化した屋敷で繰り広げられる、背徳の饗宴。
そしてそこには、決して存在してはならないものが……。
信心深く純真なクリスに対し、神とも獣(けだもの)とも取れる不思議な青年、ノアール。
美も醜も善も悪も、何もかもが混在している美しきごった煮の新上海で、彼らは何をなし、どんな生を歩んでいくのか……?
魔都の物語はまだ始まったばかりで、ちりばめられた謎はどれも魅力的だ。
悦楽の異界に酔いつつ、次巻を心待ちにしたい。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」