日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『学年誌ウルトラ伝説』
『学年誌ウルトラ伝説』
円谷プロダクション(監修) 秋山哲茂(編) 小学館 ¥3,300+税
(2017年6月28日発売)
1960年代から1980年代にかけて小学館の「学年誌」を飾った、ウルトラマンシリーズ関連の記事やマンガの傑作選というべき本作。
作品でいえば『ウルトラマン』から『ウルトラマン80』を中心に、内容や表記も掲載時のままにオールカラー&原寸大で完全復刻!
たとえば放送直前になって改題された『ウルトラマンA』は、発表時のまま『ウルトラA』で掲載。
タイトルだけでなく、Aのデザイン自体がNG版の姿となっているのも要注目だ。
ほかにも、こういった復刻モノにはありがちな「広告エリアだけ差し替え」ということもあえて行わないなど、当時の空気感を伝えることに最大限の配慮がなされているのがうれしい。
また、「学年誌」以外の幼年誌や「なぜなに学習図鑑」からも復刻記事がチョイスされており、バラエティ度でも文句なしの内容。
対象作品も雑誌先行で展開した『アンドロメロス』、ウルトラマンと同じ円谷作品である『ミラーマン』や『ジャンボーグA』、今になって急速に知名度を高めた『レッドマン』まで含まれているため、よほどのマニアでなければ初めて目にする記事やマンガが多いのではないだろうか。
とりわけ注目したいのが、小学館がウルトラマンシリーズの独占掲載の権利を獲得していた70年代の誌面。
この頃はテレビ本編では触れられていない独自設定が学年誌で展開されており、それが本編に影響を及ぼしたり、公式設定としてフィードバックされることも少なくなかった。
その最たるものが「ウルトラ兄弟」という設定だが、それが形作られていく過程の一端を誌面からうかがい知ることができるだろう。
ほかにも『ウルトラマンレオ』の冒頭ですでにレオとウルトラ兄弟がある宇宙人(といってもバレバレなのだが)の陰謀で一戦を交え、レオがタロウを圧倒したことになっていたり、変身できなくなったセブンを復活させるために光の国をあげての大手術が計画されていたりと、夢いっぱいの記事が満載。
本編エピソードの原型と思わしきものから「なんじゃそりゃー!」とツッコミを入れたくなるものまで、その自由度の高い記事は一読の価値ありだ。
資料性が高い復刻本というだけでなく、今もってワクワクできる読みものとしても注目したい1冊である。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。