日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『まじっく快斗』
『まじっく快斗』 第5巻
青山剛昌 小学館 ¥429+税
(2017年7月18日発売)
『名探偵コナン』の青山剛昌の、もうひとつの人気シリーズ『まじっく快斗』の最新刊となる第5巻が発売された。 第4巻が出たのは2007年2月。じつに10年ぶりの新刊となる。
犯行予告をした現場には、ファンが集まる人気の大泥棒・怪盗キッド。
その正体は、マジックが得意な高校生・黒羽快斗(くろば・かいと)なのだ。
快斗の父・盗一は、天才奇術師にして、初代怪盗キッドであった。
快斗は、8年前の父の死の原因となった、伝説の宝石“ビッグジュエル”を探し求めている。
その前には幼なじみの同級生青子の父・中森警部や、“ビッグジュエル”を狙う謎の組織が立ちはだかる。
第5巻では、父・盗一と母・千影の出会いが語られたり(怪盗淑女[ファントム・レディ]の巻)、キッドをライバル視する全身黒ずくめの怪盗コルボーが現れたり(真夜中の烏[ミッドナイト・クロウ]の巻)、青子に怪盗キッドの正体を見破られそうになったり(日輪の後光[サン・ヘイロー]の巻)といったエピソードが登場する。
そして、本作の巻末には復刻読切「さりげなくルパン」が収録されている。
マジックが得意な高校生・流犯快斗(るぱん・かいと)は、テストを盗んだり、変装して学校を抜け出したりして教師を悩ませている。
一方、快斗の幼なじみの宝睦葵子(ほーむず・あおこ)は、忘れ物や迷子の子猫探しなどを、なんでも無料で手がける探偵好きな少女である。
そうした2人の前に栗香寺賢(ぐりこーじ・けん)という怪しい学生が現れる。
「かいと」「あおこ」という名前や、快斗がマジック好きである、というところから『まじっく快斗』と似ているなぁ、と思われるだろうが、それもそのはず「さりげなくルパン」は、『まじっく快斗』の原型となった作品なのである(1980年代の絵柄なので、古くからの読者には懐かしく感じられようし、若い世代にはかえって新鮮かもしれない)。
雑誌未発表で、『青山剛昌短編集4番サード』などにしか収録されていなかったレアな作品の再登場だ。そうしたボーナストラックもある『まじっく快斗』の第5巻、ぜひ手にとっていただきたい。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2017本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。