日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『このマンガがすごい!comics 小さな巨人』
『このマンガがすごい! comics 小さな巨人』 第1巻
丑尾健太郎(脚本) 八津弘幸(脚本協力) 安宅十也(画) 宝島社 ¥640+税
(2017年8月10日発売)
今春、TBS系列で放送され大ヒットとなった警察ドラマ「小さな巨人」のオリジナルコミックスが登場した。
主人公・香坂真一郎は元警視庁捜査一課の刑事で、出世街道をひた走るエリート刑事だったが、ある事件をきっかけに芝警察署へ左遷。
本作はそのきっかけとなった出来事に絡む事件を巡る物語なのだが、その背景に描かれる「警察組織の膿」こそが最大の見ものだろう。
左遷をきっかけに忠実な組織の一員であったはずの香坂が、組織に戻ることを拒み、上からの数々の横槍にもめげず、柄でもなく勘を頼りに捜査を進めていく。
非エリート集団を鼓舞し、小さな証拠を洗い出す熱い捜査にくわえ、捜査一課時代のツテを利用した理論的な捜査で、事件の犯人を追い詰め、さらには自身が左遷されたきっかけともなる「警察組織の膿」の一端にも迫る――。
刑事にとって犯罪の真実を突き止めることこそ正義だが、安穏とうまい汁を吸い続ける仲間たちを守ることに正義を感じる人間もいる。
上層部の判断に怒りを覚えながら、その組織に属し続ける矛盾は、一般の会社員が抱える悩みと同じだろう。
多くの会社員が抱く理想と現実を、それぞれの正義というわかりやすいファクターを通して描く警察ドラマは、やはり読みごたえたっぷり。
いぶし銀のベテラン刑事の渡部や、上昇志向の強い捜査一課のエリートでありながら、香坂に手を貸す山田の存在も気になるところ。
香坂を軸に物語は進むが、彼らの活躍にも期待して見てほしいところだ。