365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月3日は「しんくみの日」。本日読むべきマンガは……。
『ごくせん』第1巻
森本梢子 集英社 ¥640+税
9月3日、本日は「しんくみの日」。
預金の受け入れ、資金の移動や貸し出し(融資、ローン)、手形の発行などを行う金融機関のひとつである信用組合が、
「く(9)み(3)あい」の語呂合わせで制定。「信組(しんくみ)」と略して呼ばれていることから、
「しんくみの日」として設けられ、9月1日~7日を「しんくみの日週間」と定め、
「しんくみ」をもっと知ってもらえるように各信用組合でさまざまな奉仕活動やイベントが毎年全国で実施されているのだそうだ。
……さて、ここで質問。
あなたは「○○くみ」が好きですか?
ゴクミ(女優・後藤久美子の愛称)、エンクミ(女優・遠藤久美子の愛称)、最近ではティーンに人気のモデル・くみっきーなんかもいたりするが、マンガの「○○くみ」といえば、筆者は『ごくせん』の主人公「ヤンクミ」をあげたい。
なんだかこじつけ感もあるが、「しんくみの日」に合わせ、『ごくせん』を本日ご紹介しよう。
不良高校生の多い男子校・白金学院高校にある冴えない女教師がやってきた。
おさげに眼鏡、ダサいジャージで登場し、
ガラの悪い生徒たちにはトボケたこともいうちょっとズレた彼女、
山口久美子には、ある“ワケありな秘密”があった――。
本作を手がけるのは
『研修医なな子』、『デカワンコ』、『高台家の人々』、
さらに2018年にNHKで実写ドラマ化が決定した『アシガール』など、数々の大ヒット作を生みだした森本梢子。
2000年から「月刊YOU」で連載をスタートし、女優・仲間由紀恵主演でドラマ化、映画化もされ一躍ブームともなった。
じつは実家が極道一家である久美子。
幼少期に交通事故で両親を亡くし、唯一の身寄りであった
祖父、大江戸一家第3代目・黒田龍一郎に引き取られた。
コワモテの任侠な人たちのあいだで「蝶よ花よ」と育てられ、
芯からすっかり一家に染まってしまった久美子は、外見は地味~で冴えない女子なのに、
ふとした時に見せる極道台詞や、鋭い眼光で学生たちや周囲の人たちをドキリとさせる。
若頭に小学生の時から鍛えられた結果、ケンカはめちゃくちゃ強くなり、
マンガではヒロインというよりヒーローのポジションだ。
そんな久美子は自分の素性を隠しながら、 まっとうに高校教師として悩み多き高校生男子たちとぶつかったり、 青春したり、助けあいながら強い信頼関係を結んでいくのだが、 やはり、そこは森本梢子、本作は単なる青春ドラマではないのだ。
恐いイメージの強いヤクザ一家も、久美子の前ではよきファミリー。
「お嬢~~♡ 」と、常に久美子の身を案じ、彼女に非礼な態度をとった生徒がいると聞いたならば、
ドスを持って「お礼参りに行きましょうか」と殺気立つ。
ヤクザだって家事洗濯もするし、恋に悩んだり、ダンナの浮気に憤るのだ(極妻だけど)。
著者の独特なギャグセンスが随所に光り、人間味あふれるところも本作の醍醐味。
しっかり描かれる人情・正義、そして学校が舞台なので
イジメ問題なども取り扱い、コメディのなかでもキャラクターたちの心理が丁寧に描かれ、
作品の深みも増す。森本梢子ワールドをあますことなく堪能できるのだ。
「しんくみ」から「ヤンクミ」とちょっと安直な連想でご紹介したが、 ぜひ信頼感ばっちりの姉御肌(いや、兄貴肌?)の「ヤンクミ」が活躍する 『ごくせん』を楽しんでほしい。
<文・はろるどキサラギ>
フリー編集者。見習い感あふれる感じながら、ときに執筆やデザインを手がけることも。アニメとマンガが“ズッ友”。スポーツしてる青春DKが大好きだと叫びたい。