365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月21日は宮沢賢治(小説家)が亡くなった日。本日読むべきマンガは……。
『銀河鉄道999 1 出発のバラード』
松本零士 小学館 ¥1500+税
9月21日は、詩人で童話作家の「宮沢賢治が亡くなった日」。
宮沢賢治といえば『銀河鉄道の夜』や『注文の多い料理店』、『風の又三郎』などで知られる国民的作家。
しかし生前、彼の作品はほとんど出版されず、その評価が高まるのは没後だった。
そんな「宮沢賢治が亡くなった日」にふさわしいマンガといえば、『銀河鉄道999』をおいてほかにない!
『銀河鉄道999』は1977年から1981年まで「週刊少年キング」(少年画報社)に連載されたSFマンガ。
銀河の星々の間を銀河鉄道が走る未来。機械化人の人間狩りで母親を殺された星野鉄郎は、機械の体をくれるという星を目指し、謎の美女・メーテルに導かれ銀河鉄道999に乗りこむ。
アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の設定やビジュアルでの参加がきっかけで大ブレイクした松本零士。
ヤマトは地球の滅亡をかけた命がけのミッションを遂行したが、999は旅。ロマン成分5割増しだ。
銀河を横断する999号は科学の粋を集めて設計された最先端技術の塊だが、二度と戻らぬ旅に出る乗客のため、見かけは大昔の蒸気機関車に似せてつくられている……という設定もロマン心にあふれている。
「銀河鉄道」という発想は賢治の『銀河鉄道の夜』に端を発するが、生まれ故郷の九州から上京する時に乗った夜汽車のイメージも大きいという。
大きな夢と志に心を奮い立たせながら、故郷をあとにする少年。
その姿はいつの時代であっても感動的だ。
さらに、『銀河鉄道の夜』ではジョバンニとカムパネルラという2人の少年が主人公だったが、『銀河鉄道999』では鉄郎のそばには常にメーテルがいる。
ほの暗い客車の向かいの座席に座る愁いを帯びた美女。間違いなくロマンだ。
ヒロイックな冒険譚であっても、松本零士の作品には人間の情念がべったりと塗りこめられている。
鉄郎が訪れた星々で出会う様々な出来事は寓意性に富み、心のひだに深く染み入るだろう。
星の彼方を走る車輪の音に思いを馳せながら、『銀河鉄道999』を読もう!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。学年誌の傑作ウルトラ記事を集めた新刊『学年誌 ウルトラ伝説』が発売中! 4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。