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9月26日は「ワープロ記念日」 『みのり伝説』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/09/26


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

9月26日はワープロ記念日。本日読むべきマンガは……。


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『みのり伝説』 第1巻
尾瀬あきら 小学館 ¥485+税


1978年9月26日、東芝が世界初の日本語ワードプロセッサ「JW-10」を発表した(販売は翌年の2月から)。価格はなんと630万円!
日本語ワープロ開発における最大の問題だった、漢字の入力方法を“読みとしてかなを入力し、変換候補から選択する「かな漢字変換」”を採用してクリア。この画期的な日本語入力システムは、現在に至るまで当然のように使用されることとなる。

今となっては何かと暗い話題ばかりだが、東芝ってやっぱりすごい企業なんですな。
てなわけで本日は「ワープロ記念日」に制定されている。

630万円もした「JW-10」以降、飛躍的な進歩を遂げていくワープロ専用機。ほかのメーカーも参入し、競争は激化。価格もガンガン下がり始め、80年代中盤には15万~16万円のモデルが中心に。たかだか7年弱で40分の1になったのだ。

90年代に突入する頃には、持ち運び可能なタイプが主流となり、多彩なフォントや表計算ソフトを内蔵するなど、現在のノートパソコンに近いハイスペックとなっていく。値段もさらに下がっていき、我々ライターにとってもワープロは必須の商売道具となった。

ちょうどその頃(1994年)に「ビッグコミックオリジナル」でスタートしたのが、『みのり伝説』だ。主人公は、28歳の誕生日を契機に勤めていた弱小出版社に退職届を突きつけ、フリーライターへの転身を宣言した杉苗みのり。みのりは会社を辞めたその足で家電販売店に向かい、10万円前後のワープロを30回ローンで購入。意気揚々と自宅のアパートに帰るのだが……。

ほどなく勤めていた会社は倒産し、未払いの給料がパー。住んでいるアパートも地上げにあい、早々に立ち退かねばならなくなる。そんな踏んだり蹴ったりの船出だったが、それでも新居でワープロを立ちあげ、前を向いてライター稼業への一歩を踏み出す。

ライター仲間のあいだでは連載当時、『みのり伝説』にツッコミを入れることが大流行していた。
三十路間近のいかず後家貧乏ライターとして描かれるみのりが、その実、リア充全開だったからだ。
駆け出しのフリーなのに家賃7万5000円の部屋に住み、特に営業活動もしていないのにバンバン仕事が入り、あげくの果てはタイプの違う2人の担当編集者と恋に落ちる。
安い安いとブーブーいっている原稿料も、今のWEBライターから見れば立派な高給ライター様だ。

もちろん90年代中盤と2017年現在では出版業界の状況もライター仕事の内容もまったく違う。ネットのない時代、情報を得るためにライターがどれだけ足と時間と電話代を使ったか。駆け出しのみのりなんてファックスすら持っていないから、原稿をワープロで打ち出して、出版社まで持参しているんですよ(のちに買います)。

そんなライターたちにとっての必需品も、90年代後半から爆発的に普及するパソコンにとって代わられ、2002年にはワープロ専用機の生産は終了することになる。今の若手ライターは、ワープロ専用機なんて見たことも触ったこともない人が大半だろう。

それでも「JW-10」の魂はワープロソフトに移行され、今もこうして「かな漢字変換」にお世話になっている。もはや手書きには戻れないライター諸氏よ、今日くらいワープロへの感謝を捧げようじゃないか。
そして『みのり伝説』を再読し、初心を取り戻すのだ。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐ、みのり世代のライター。

単行本情報

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