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『社畜フランケン』 第1巻 鳥屋 【日刊マンガガイド】

2017/11/06


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『社畜フランケン』



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『社畜フランケン』 第1巻
鳥屋 講談社 ¥581+税
(2017年10月6日発売)


「人間になりたい!」という思いを抱くフランケンシュタインが、人間と共存するためサラリーマンとなり、だれよりもまじめに律儀に仕事をがんばる姿を描いた『社畜フランケン』。

モンスターだから睡眠も必要ないし過労死もしない(もう死んでるし)。無趣味・無嗜好・貯蓄家(使い道がない…)で会社にしか居場所がないため残業も休日出勤も喜んで引き受ける――とは、なんとも絶妙に「過労死の国ニッポン」を風刺したブラックコメディである。

SE課でソフトウエア開発に携わっている彼が、納期前のフロアを眺めながら「この同族感…」とポッと顔を赤らめたり、「なあ、死んでる体働かせるってどーなん? 仏さん安らかに眠らせてやれよ……」という同僚の声にも「むしろつないだ体のほうが動きたくてウズウズしてるんですよ」と不気味に微笑んだり、フランケン(体中の縫い跡がなければ影のあるイケメン風!)本人はどこまでもピュアでまじめなだけに、言動のすべてがいちいちシュールでおかしくってお茶目で、ついつい引きこまれる。

pixiv発の4コマということから、設定ありきの軽~い一発芸的コメディと思いきや、超ポジティブな営業課のエース・モテ作、ツンデレキャラの部長(毛髪は死んでる)、元会社のマドンナでフランケンに恋して痛いゾンビキャラになったゾン子ちゃんなど、個性あふれる同僚らとの交流も様々に描かれ、お仕事群像ドラマとしても秀逸。

フランケンの出生の秘密や就職の際のエピソードなど、物語のバックボーンも細かく描かれる一方で、根底にはフランケンの「なぜ人は働くのでしょうか?」といった哲学的ともいえる人間の存在への問いかけがあり、意外と深イイ。
「この国は優しいですね。働いてさえいえれば「人間」としては扱われずとも「サラリーマン」としてなら扱ってもらえるのですから」というフランケンの言葉は、せつなくて眩しくて、我が身を振りかえってアレコレて考えずにいられない!

本作は現在も好評連載中ということで、人間に憧れるフランケンが今後どうなるのか……。
楽しみに追いかけたい。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。『音楽マンガガイドブック』(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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