『団地ともお』第24巻
小田扉 小学館 \537+税
(2014年9月30日発売)
連載11年目で、単行本の巻数も24巻を数える小田扉『団地ともお』。今なお安定のおもしろさだが、なにしろ不思議な作品だ。
団地に暮らす小学4年生のともおと、周囲の人々の身辺記。大げさなギャグが準備されているわけではないのに、たまらず笑ってしまい、大がかりなドラマが用意されているわけではないのに、しんみり来てしまう。
本来はギャグマンガなのに、しんみり来てしまうというところがポイント。
ペンタッチもコマ運びも淡々としているのに、なぜだかどこか情緒的で叙情的。おバカではあったけれど、日々、世界の真理に触れたような感動があった子ども時代を思い出させるからというのもあるかもしれないが、やはり大きいのは小田扉が描き出す世界観の巧みさだろう。
どこか哲学的で、なぜかペーソスあふれていて、たまらなくおかしくもいとおしくもある世界観。
作風は異なるが、例えばいがらしみきお『ぼのぼの』のそれに近いかもしれないし、すでに『団地ともお』は、その域に達している。
最新24巻でも、ともおは相変わらずのともおっぷりを発揮。動物ものまねでクラスの笑いを独り占めして、笑いに厳しい吉本くんを人知れず刺激してみたり、これまではタネキ寝入りでやりすごしていたことが許されなくなって、大人になることを実感してみたり。
アーケードゲームのヒーローで、子どもたちから英雄視されているサラリーマンの「キング」こと毛利と、電器屋の「チャンプ」こと大枝のふたりのエピソードは、それこそ笑いもペーソスもたっぷり。おまけに、バカだけれど素直で、子どもながら男気もあるともおのかわいさときたら!
個人的には、現代のカッコいい、そして愛すべき主人公No.1だ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。