日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『このマンガがすごい! comics 13月の悲劇 美内すずえセレクション 白の書』
『このマンガがすごい! comics 13月の悲劇 美内すずえセレクション 白の書』
美内すずえ 宝島社 ¥1,500+税
(2018年1月12日発売)
『ガラスの仮面』の美内すずえによるオカルト&冒険マンガを収録された『美内すずえセレクション 黒の書』に続き、『白の書』が登場!
本書の収録作品は、悪魔ホラー「13月の悲劇」、トラウマ作品として名高い心霊ものの「白い影法師」、そしてサスペンススリラーの隠れた名作「孔雀色のカナリア」の3編だ。
1971年発表の「13月の悲劇」は、全寮制の学校を舞台とした作品である。
聖バラ十字学校に編入してきたヒロインは、規律の厳しさの奥に何か秘密が隠されていると察知する。そして、ある日、シスターたちの行う儀式を目撃してしまう。学園の実態は魔女を養成する悪魔教団だったのだ!
ホラー好きなら「77年の公開映画『サスペリア』にそっくり」と思うのでは? 世界的なヒット作に先駆けた作品であるという側面からも、美内すずえのすごさに唸らされる。
「白い影法師」は多くの人がトラウマ作品として挙げるだけあり、何度読み返しても背筋がゾクッとする逸品だ。
主人公・涼子が転校してきた学校の教室には、なぜか空席がひとつ。涼子は、かつてその席に座っており、病死した少女の霊に取り憑かれてしまう。昭和期に大流行した「コックリさん」、心霊写真などを駆使して霊に迫り、追い払おうとするが……。
主人公を脅かすものの冷気までも伝わってくる傑作だ。
「孔雀色のカナリア」は、怖ろしくも哀切を感じさせるサスペンスだ。
不幸な境遇に育ったヒロイン・亜紀子が、生き別れた双子の妹が大富豪の家に引き取られていると知ったことからドラマは幕を開ける。亜紀子は妹を殺害し、入れ替わりを企てたのだ。本来は健気で純真な心を持つ亜紀子だが、理不尽に虐げられてきた積年のうらみが彼女を凶行に走らせることに……。
ミステリー要素の強いドキドキ展開のなか、追い詰められていくヒロインに思い入れずにいられない。
色の異なる3編それぞれに読みごたえ十分。
じわじわ迫りくる恐怖、情感たっぷりのドラマに浸れる1冊だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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