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【インタビュー】卯月妙子『人間仮免中つづき』 盗聴、幻覚、自殺未遂、失禁、心霊体験、そして恋……【ここでしか読めない本WEBだけの描き下ろしマンガあり!】

2017/01/23


人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。

今回お話をうかがったのは、卯月妙子先生!

祝★2017年2月「このマンガがすごい!WEB」ランキングオトコ編第1位!
歩道橋から落下して顔面崩壊、失明、統合失調症……サブカル漫画家・AV女優としてカルト的人気を集めた卯月妙子が、病状の悪化によって何度も執筆を断念せざるをえないようななかで、25歳年上のボビーと愛を深めてゆくさまを赤裸々かつコミカルに綴り、大きな反響を巻き起こした『人間仮免中』。
あれから4年半、ついに放たれた続編となる本作『人間仮免中つづき』は、紆余曲折の果てにボビーと再びいっしょに暮らすようになり、ついに精神の充足を得た彼女のハッピー感が伝わってくる、ディープかつピュアなラブストーリーとなった。

インタビュー第1弾では、本作の完成に至るまで長~い道のりについて、そして極私的作家・卯月妙子の創作や表現の核についてお話しいただきました!
さらに、なんと「このマンガがすごい!WEB」だけにいただいた特別描き下ろしマンガが公開!
今作『人間仮免中つづき』制作の裏話っていうか、そんなこと描いていいの? という、スペシャルなマンガが特別に掲載中です!

<インタビュー第1弾>
【インタビュー】卯月妙子『人間仮免中つづき』 統合失調症からの顔面崩壊!! 衝撃の前作『人間仮免中』の『つづき』が描かれた!

<特別描き下ろしマンガ>
【特別掲載】読めるのは当WEBだけ! 『人間仮免中つづき』特別描き下ろしマンガ!! 『人間仮免中』と『つづき』の間、そして……!?

後編では、卯月先生を支える存在であり『人間仮免中つづき』のキーパーソンでもある、ボビーさんに対する想い、そして、先生の今後の展望についてもおうかがいしました!

著者:卯月妙子

1991年『タブー』(三和出版)で漫画家デビュー。以後、コミックエッセイを中心に活躍する。持病である統合失調症の悪化により、長く断筆状態が続くも、2012年『人間仮免中』(イースト・プレス)は、「このマンガがすごい!2013」オトコ編第3位にランクインするなど、高い注目を集めてベストセラーに。

4年半を経て描かれた本作『人間仮免中つづき』(小学館)は、『人間仮免中』の続編。

お互いに残された時間は少ないから……
『人間仮免中つづき』は『◯◯◯◯』風ラブコメ!?

――本作を語るうえで外せないのが、25歳年上の恋人・ボビーさん。卯月さんが生活するうえでもマンガを描くうえでも、やはりボビーさんの存在は大きいと思うんですが……。

卯月 これ以上の存在はないですよね。生きてきて、こんなにガツンと負けたと思った人は初めてなんですよ。もう、かなわない。何するにしてもスケールがでかすぎて、マジギレしてもすごいし、いろんなことを受け止めてくれるという部分でもかなわない。もう人生経験でもかなわないですよ。こんな波瀾万丈な人はいないだろうって。

――いや、それは卯月さんも負けてないと……(笑)。ボビーさんにしても決して聖人じゃなくて、政治の話でエキサイトしたり、酔っぱらって急にキレて出ていったり、ものすごくいびつで人間くさくて。そんな2人がむき出しでぶつかりあって、受け止めあって……。人間ってここまで他人を本気で受け止められるんだって、読者としてはやっぱりそこに心揺さぶられずにいられません。

卯月 いや、ケンカする時は本当にマンガ以上で。「死ね!」「殺してやる!」から始まり、ケンカの最中にやけ酒はじめたり……。でも、何にしてもガチでやりあってるので、雨降って地がうまいこと固まってくれてるんじゃないかと。私もボビーには隠しごとはいっさいしないですし、結束がすごいので、どんな事件があっても2人で「ヨシ、ここまで!」って決めたら、すぐにもとに戻れる感じですね。

これ以上の喧嘩というのもなかなか想像がつかないのですが……(汗)。

これ以上の喧嘩というのもなかなか想像がつかないのですが……(汗)。

──そういうガチの関係性を築けてる理由って、単に相性以外にも残された時間がもうないという……、死を意識しているからこその部分はあります?

卯月 ありますね。ボビーも年齢的なところでそうだし、私自身ももう病気で脳の萎縮がかなり進行してまして、あとどれぐらいもつかわからない状態なんで、今のうちに印税を貯めて、病院で一生すごせるだけのお金をつくっとかないといけなくて……。あと、ボビーが死んだショックに私が耐えられるかという問題もあって、たぶんショックで大きな症状が出ると思うんですよ。それを乗り越えてマンガを描けるかっていうのもあるし、そこでダメになって一生入院になるかもしれない。だから「時間がない」というのは、お互いにあるんですね。

──いやはや壮絶というか……。しかし「乗り越えてマンガ描けるか?」と思ってるってことは、描けることなら描き続けたいと……?

卯月 私としてはボビーの死を、最後まで描ききりたい。ボビーがあの世で読めるようにお寺で焼けたら御の字なんですけどね。私の最後のラブレターなので。

──前作にしても今回にしても、特殊といえば特殊な物語なんですけど、大切な人とどれだけ本気で向きあうかとか、かぎられた時間をどう生きるかとか、「じつは自分もいっしょじゃん!」って。気づかされるものがあるからこそ、ここまで大きな反響があるのかなって。

かぎられた時間だからこそ、その時間は貴重。本作だからこそ説得力がある。

かぎられた時間だからこそ、その時間は貴重。本作だからこそ説得力がある。

卯月 そうですね。私は今回の作品は壮年の、それこそ60代ぐらいの方にも読んでいただきたいなと思ってて。こないだミック・ジャガーさんが70歳ぐらいでお子さんをつくられたじゃないですか。あのニュースを見て、ボビーが「俺もがんばる!」っていってて(笑)。やっぱり、すごく勇気づけられるじゃないですか。だから、これも60代ぐらいの方が読めば、若い読者の方だとわからない部分をわかっていただけるんじゃないかと思うので。

──今回あとがきで「漫画からすっかり毒っ毛が抜けて、拍子抜けされたかと思いますが」と書かれていて。たしかに、いかにもな過激さは少し薄れてますが、本作の穏やかなハッピー感は数々の壮絶な事件を経たからこそたどりつけたもので。「健康で、安定した、不安のない毎日が、かけがえのない幸せです」なんて言葉も、卯月さんがいうからこそ説得力あるし、前作からの読者としては、よくぞここまで……とこみ上げてくるものがあります。
しかし、前作は闘病記的な側面もありましたが、本作に関しては完全にラブストーリーですよね。

卯月 そうですね。自分のなかでも、ちょっとラブコメを意識したところもあって。恥ずかしいんですけど、黒崎くん(『黒崎くんの言いなりになんてならない』)を読んで、こういうのを描くぞ! と。

──なんと! 『ボビーくんの言いなりになんてならない』みたいな(笑)。

卯月 そうそう、あれを教科書にしました。

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