日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『人間仮免中つづき』
『人間仮免中つづき』
卯月妙子 小学館 ¥1,400+税
(2016年12月12日発売)
統合失調症を抱え、自殺未遂を繰りかえしていた卯月妙子が、衝撃的な過去と現在を赤裸々に描き、「このマンガがすごい!2013」でオトコ編3位を獲得するなど、大反響を呼んだ人間賛歌の続編。
歩道橋バンジーから奇跡的な生還を遂げたものの右目を失明し、献身的な高齢彼氏のボビーとも諸事情で同棲を解消しなければならなくなり、実家に帰ることすら両親に拒否された卯月。
彼女は知人が運営する函館の精神障害者向けの施設で生活することになった。
それから5年間、ボビーとは離れて暮らしていたが、2人はラブラブのまま。
まず、その点にホッとさせられた。だが、卯月の統合失調症はかつてないほどに悪化。
ボビーは67歳で退職後、再就職のメドが立たぬまま卯月に送金を続け、貯蓄を使い果たしてしまう。それでもボビーがついに北海道へやって来て、2人は一緒に暮らし始める。互いが生きていることを喜びながら。
以降、卯月の病気とつきあいつつ、仲よくケンカしながら、北の大地での幸せな生活を続けていく。しかし、ボビーは卯月より25歳も年上で古希目前。
北海道で職探しは難しく、卯月は自分がマンガで稼ぐしかないと奮闘を始めるのだが……。
前作のように仰天するような奇行が描かれているわけではない。
それでも壮絶さは紙上からにじみ出ている。
そして、それ以上にボビーとの至上の愛があふれ出ている。
手垢のついた言い方しかできなくて申し訳ないが、終盤は鳥肌が立ちっぱなしで、ただただうち震えるしかなかった。そして、これをネタバレといわれたら、さらに申し訳ないが、こんなハッピーエンドが待ち受けるなんて思いもよらなかった。
前作以上に「このマンガがすごい!」と自信を持ってオススメします。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。