『ニンジャスレイヤー グラマラス・キラーズ』第2巻
ブラッドレー・ボンド/フィリップ・N・モーゼズ(作) さおとめあげは(画) 本兌有/杉ライカ(訳) わらいなく(キャラクター原案) KADOKAWA/エンターブレイン \680+税
(2014年10月1日発売)
ネットワークとサイバネティックス技術が過剰発展した近未来の日本。半神的存在「ニンジャ」が率いる暗黒メガコーポの支配によって、首都・ネオサイタマは堕落の一途をたどっていた。
ニンジャの抗争に巻き込まれ、妻子の命を奪われた「サラリマン」のフジキド・ケンジは、自らもニンジャとして覚醒し、悪しきニンジャを狩る復讐鬼「ニンジャスレイヤー」となるのだった……。
「Wasshoi!」「ゴウランガ」「インガオホー」「ショッギョ・ムッジョ」など、「忍殺語」と呼ばれる独特の言語センスでつづられた『ニンジャスレイヤー』シリーズは、ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズという外国人が書いたと言われている、サイバーパンクアクション小説だ。
本兌有と杉ライカの翻訳とされるTwitter上での連載が開始されると、誇張された奇抜な日本像と痛快無比なストーリー展開で話題を呼び、今もなお「ニンジャヘッズ」と呼ばれるコアなファンを大量に作り出し続けている。
ドラマCD化やアニメ化などメディアミックスにも積極的で、『ニンジャスレイヤー』(脚本:田畑由秋、作画:余湖裕輝)や『ニンジャスレイヤー 殺』(作画:関根光大郎)など、別々の出版社から様々な作家の手によるコミカライズも発売されている。
そんな同シリーズのなかで、もっとも異彩を放つ作品が、さおとめあげはの『ニンジャスレイヤー グラマラス・キラーズ』だ。
原作ストーリーを独自の解釈で再構成した本作は、「グッドルッキングガイズ重点」をスローガンとしており、露出度の高い装束をまとった美青年ニンジャたちが、美しい顔をギリギリまで近づけ合いながら戦うといった、BL描写を積極的に取りこんでいるのが最大の特徴。
無骨なニンジャ同士の殺し合いという血生臭さから一転、薔薇の香りが漂うような耽美な世界観へと大きく舵を切った様は、原作を知る者ほど衝撃を受けるだろう。
一見するとイロモノのようだが、扇情的な絵面以外にも見どころは多く、原作では早々に退場してしまったキャラクターの内面をすくい上げるような丁寧な話作りも、女性向けならではのおもしろみだろう。
そもそも、原作小説がキャラクターの魅力を押し出すことを重視したつくりで人気を獲得していたのだから、そのアピール対象が女性へと向かっただけで、これもまた『ニンスレ』の正統進化と言えなくもない。女性だけではなく、男性のニンジャヘッズにも読んでもらいたい快作だ。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。