『珍神』
永井三郎 ふゅーじょんぷろだくと \861+税
トイレは、なんだか落ちつく場所。
マンガ片手にトレイにこもるという人も多いけれど、ひょっとしたら、今まさにこの記事をスマホを片手にトイレで見ている人もいるのでは!?
ただ、落ちつけるトイレはきれいさあってこそ。現在では水洗はもちろん、洋式便座もあたりまえになっているが、世界を見ればいまだ40%の人たちが不衛生な環境を強いられている。
そこで2001年に設立された“世界トイレ機関”が、同年に国連の協賛を得て制定したのが、11月19日の「世界トイレデー」だ。その目的は、健康問題や資源・経済問題にも繋がるトイレ問題を解決して、衛生施設の普及を推し進めていくというもの。
そんな日にぜひおススメしたいのが、永井三郎『珍神』。本作は、神とされながらも残念な立場に置かれている、便所神、貧乏神、疫病神、死神にスポットを当てたギャグマンガだ。
なぜか暇つぶしに学校に通っている彼らは、同じ手芸部の仲間。見た目は『花より男子』の“F4”ばりにみんなイケメンなのに、役職も性格もちょっと“残念”ということで、“Z4”扱いされている。
そんな残念な神さまたちの珍奇な日常が展開されていく。
ジャンルとしては、BL作品の本作。ただ、そのテイストはほとんどなくて、これでもかと織り込まれる小ワザも大ワザも利いたギャグで楽しませてくれる。
その中でそれぞれの葛藤や、悩みは違えど苦労は同じ神さま同士の交流も描かれていて、じんわりともほんわかとも。
伝承上の便所神の仕事についても知れて、お腹を抱えて笑ってしまうだけに、排泄物のお通じにも、頭と心のお通じにもぴったりかも?
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。