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11月30日は日本ラグビーフットボール協会が設立された日 『ALL OUT!!』を読もう! 【きょうのマンガ】

2014/11/30


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『ALL OUT!!』第1巻
雨瀬シオリ 講談社 \552+税


あと1カ月弱で大正時代が終わりを迎える1926年の今日、日本ラグビーフットボール協会が設立された。

1899年に横浜生まれのエドワード・B・クラーク教授と“日本ラグビーの父”と呼ばれる田中銀之助によって慶應大学の学生に紹介されてから27年、大学生を中心に広がりを見せたラグビーはあっとう間に日本に浸透した。
1920年代には1500以上のクラブが存在し、ラグビー選手の登録は6万人超。このようななかで創立されたのが日本ラグビーフットボール協会だ。現在はラガーマンで知られる森喜朗元総理が会長を務めている。

このように、もともと日本でも親しみが深いラグビーだが、70年代後半から80年代後半にかけて空前のブームが訪れる。
早明戦、早慶戦といった伝統の対抗戦や日本ラグビーフットボール選手権大会といった試合ではスタンドが満席となることが常であった。
当時はサッカーよりもラグビーのほうが人気は上。松尾雄治、平尾誠二、大八木淳史といったスター選手も多数存在した。

ところが今はどうだろう。ラグビー日本代表のIRA世界ランキングが過去最高の9位(2014年11月10日現在)につけているにもかかわらず、メディアの扱いは極めて薄い。
2019年には日本でラグビーワールドカップが開催予定だというのに、憂慮すべき事態である。
サッカーの蹴球に対してラグビーは闘球と書くように、男と男がガチンコでぶつかり合い、泥にまみれるラグビーは、現代の若者に受け入れられない側面もあるのだろう。だが競技としてのおもしろさ、熱さは、決してサッカーに負けていない。

そんななかで登場したのが雨瀬シオリの『ALL OUT!!』である。
県立神奈川高校の新入生・祇園健次はチビ(159cm)呼ばわりされると、すぐにキレる暴れん坊。
同じく新入生の石清水澄明は190cmと恵まれた体格ながらおとなしい性格で、さっそく先輩に絡まれてしまう。
そんな2人が出会い、石清水がラグビー経験者だったことから、祇園はラグビーに興味を持つ。
何よりにも心に響いたのは、岩清水の「あそこ(グラウンド)にはエースストライカーも4番バッターもいない」「ボールを持ってる奴が主役なんだ」というセリフだ。

どんなスポーツよりも体格面が重視されそうなラグビー。そこへ身長160cmに満たない、ズブの素人が参戦する。
はたしてどこまで通用するのか、ワクワクするような王道のスポーツマンガ展開が待ち受ける。
主人公が初心者だけに、ルールの説明も随時挿入され、スムーズに世界観に入ることが可能。女性作家ならではのやわらかな線(通常時)と迫力の試合シーンが混在するのも魅力だ。

個性豊かなキャラクターたちが続々と登場するが、一番クールでカッコよく、今後人気が爆発しそうなのが神高ラグビー部の顧問を務める籠信吾(60歳)。ラグビー部にまともな指導者がいないことを知った祇園が、ネットで探してたどりついた人物である。
30年前の日本代表である籠は、厳しい練習を部員たちに課せながら「オールアウト(すべてを出し切る)」ことを提唱する(第4巻/番外編参照)。
これまでなんとなくラグビーが好きで、ろくな指導者もいないまま気楽に練習を重ねてきた神高ラグビー部に一本芯が通った瞬間だった。
まだまだ“伸びしろ”がたっぷりありそうな神高ラグビー部が、どこまで進撃をするのか楽しみでたまらない!



<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」

単行本情報

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