『ブルーハイジ』第1巻
ヤマダ 講談社 \900+税
(2014年10月23日発売)
東京から長崎にやってきた高校生、千賀相地(せんがあいじ)。あまりしゃべらず、いつもふて腐れている。
見た目はものすごい美少年。しかし相地は女の子。
なぜ? どうして長崎に来たの? なんで男の子みたいな格好をしているの? なぜ男の子に間違われても否定しないの? 東京にいた頃なにがあったの?
とにかく疑問だらけのマンガだ。相地は必要以上に話さない。ところどころで思わせぶりな仕草をとるから、気になってしかたない。
物語の大きな軸になっているのが、吹奏楽部。
もともと相地がいたのは、吹奏楽部の名門校。彼女はそれをきっぱりやめてしまっている。ところが長崎にきて、また吹奏楽部に入る。これも「なぜ?」だ。
本人は「逃げたわけじゃない」とモノローグで語る。
カラー4コマであることを、フルに活用している。
東京時代はすべてモノクロ。長崎に来てからはカラーになっている。その一方で、長崎での制服は地味なベタ。東京時代の制服はカラフルな赤だ。
唯一、見開きで描かれる吹奏楽部のシーンは、長崎のはずなのにモノクロ。セリフがないぶん、表情と色が強く心情を表現している。読んでいるうちに自然と、相地のモヤモヤとした思いに引き込まれてしまう。
飄々とした兄の慶次や近所の理一郎などに囲まれ、相地の新しい生活がはじまる。
彼女の「なぜ」はこれから徐々に明かされていくのだろう。第1巻は、決して急がず、今の彼女の行動をひとつひとつ丁寧に描いている。
とてもナイーブで、力強い作品だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」