『はんだくん』第1巻
ヨシノサツキ スクウェア・エニックス \540
(2014年6月21日発売)
都会育ちの若き書道家・半田清舟のドタバタ離島ライフを描いた人気作『ばらかもん』の、スピンオフ作品が登場!
書道のことしか頭にない残念なイケメン・半田清、17歳。彼の高校生活は、周囲からの羨望と本人の自己イメージに大きなズレがあるせいで、思いも寄らぬ方向へ進展してしまうことばかり。
条件は恵まれてるのに、書道以外はなぜか思いどおりにならないことばかりの半田くんのスクールライフは前途多難なのだ。
原則「1ページに横長のコマが4つ」という独特のコマ割りが、「高校生半田くんのネガティブな思い込みによる、まわりとのディスコミュニケーション」という内容と妙にシンクロ。
圧縮感のある横長のコマは、ときに個人の主観(思い込み)によって世界を切り取るフレームのようにも思えたり。『ばらかもん』での成長後の半田先生を知って読めば、ときに過去を振り返るカメラのフレームのようにも感じられたり。
本編である『ばらかもん』を知らなくても、思春期の過剰な自意識と周囲の視線や客観性とのギャップがはからずも笑いを呼ぶ、青春コメディとして、独立した作品としても楽しめる1作だ。
余談ながら、『ばらかもん』はもともとは「ガンガンONLINE」というWEBマガジンでの連載作。
一方、スピンオフの「はんだくん」は、紙の雑誌である「月刊少年ガンガン」連載。さらに『ばらかもん』も、「月刊少年ガンガン」8月号から『はんだくん』とのW連載になるそうだ。
「WEB発作品が人気作に」→「そのスピンオフが本誌に掲載」→「WEB連載も本誌にお引っ越し」という、発表媒体の変遷経緯にも、WEBマンガが増えつつあるいまのマンガの流れや可能性が感じられて、興味深い。
<文・川原和子>
マンガエッセイスト。幼稚園教諭、アニメ制作会社等を経て独立。著書に『人生の大切なことはおおむね、マンガがおしえてくれた』(NTT出版)。NTT出版Webで新連載準備中。連載はおすすめマンガ時評『此れ読まずにナニを読む?』(NTT出版Web内)。
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