『南国トムソーヤ』第3巻
うめ 新潮社 \552+税
(2014年7月9日発売)
沖縄本島から南西500メートルに位置する“羽照那(はてな)島”は、人口約80名……その名は「果ての島」から来たといわれている。
わけあって、たったひとりで東京から転校してきた少年・チハルは、片時もスマホを手放さない典型的な都会っ子。そんな彼が島で最初に友だちになったのは、なんとマンタ(オニイトマキエイ)に飛び乗る野生児のリンドウだ。
チハルは歴史の古いこの島の遺跡に、少年らしい好奇心をかきたてられていく。そして、「海がうねる日だけに出現する洞窟」の奥にあるという大型翼竜の化石を見つけようと、リンドウと誓いあう。
そんなおり、のどかな島に東京からひとりの女性が訪れた。彼女はチハルの義理の母であり、羽照那島をリゾート地として開発するとともに、チハルを東京に連れ帰ろうともくろんでいるのだ。
地域の人々が日常的に口にする「神様」の存在を、当初はばかばかしいと思っていたチハルだが、島になじむにつれてその重要性を感じずにはいられなくなっていく。
そして、自分が運命的にこの地に引き寄せられた人間であることも……。
少年たちが命を賭けて島の謎に迫るクライマックスの高揚感がたまらない、第一級の冒険譚。
どこまでも広がる海と空と白い雲がまぶしい、真夏にぴったりの作品である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」