『いとしのムーコ』第1巻
みずしな孝之 講談社 \562+税
12月16日は、柴犬が国の天然記念物に指定された日。
身近な犬である柴犬が天然記念物だったとは意外だが、それにはこんな背景がある。
明治維新以降、海外からの洋犬の輸入が活発になる一方で、日本ならではの犬種が積極的に飼育されることが少なくなり、多くの和犬が絶滅の危機にさらされた。そうした状況を受け、柴犬も1936(昭和11)年、天然記念物の仲間入りをすることになったわけだ。
さて、マンガ界を見わたすと、数のうえでは猫マンガのほうが犬マンガよりも優勢のよう。
そんななかで現在、犬マンガのエースといえるのが『いとしのムーコ』である!
柴犬のムーコは、ガラス工房を営む飼い主のこまつさんが大好き。黒々とした瞳にはさほど表情はあらわれないが、そこがリアルでもあり独特のかわいらしさとなっている。
タオルをくわえてひっぱったり、ボール遊びをしたり、ちょうちょを追いかけたり……ご機嫌でひとり遊びに興じるさまを見ているだけで幸せになってしまう。
こまつさん以外の人にはあまり懐かないところといい、“忠犬”らしいいじらしさを感じさせるところもある。
もちろんムーコの言葉はこまつさんには理解できないのだけど……「こまつさーんこまつさーん」で始まる率直なトーンのおしゃべりも癖になる味わい。「です・ます」が基本の敬語口調なのも、柴犬っぽいかも!?
基本はムーコ視点、こまつさんとは意思が通じあったり、ときにはズレてたり。
ムーコも人間界のものごとをさほど理解してなかったりするのだが、その描かれ方にも「ああ、犬にはこんなふうに見えているのかな?」と思わされる。
とにもかくにも「こまつさん大好き!」がストレートに伝わってきて多幸感いっぱい、一度読んだらムーコのとりこになってしまうこと間違いなし!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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