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『増補改訂版 東京都北区赤羽』第1巻 清野とおる 【日刊マンガガイド】

2015/01/24


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『増補改訂版 東京都北区赤羽』第1巻
清野とおる 双葉社 \1,400+税
(2014年12月27日発売)


地元・赤羽の書店で『ONE PIECE』を超える売り上げを記録する快挙(?)をなしとげるも、版元の出版事業撤退によって絶版扱いになっていた特殊エッセイマンガが、まさかの映像化に合わせて復刊(未収録エピソード&描き下ろし付き)。
こりゃめでたい!

現在「漫画アクション」誌に連載中の続編『ウヒョ!東京都北区赤羽』も含め、シリーズ全体がすでに「名著」枠であることは(個人的に)言うまでもないが、漫画家として煮詰まっていた作者が、ふとしたきっかけから「この街なんか変だぞ」「人も変だぞ」と仕事そっちのけで街の深みにハマっていくくだりが収録されている、この増補改訂版の1~2巻(旧単行本1~4巻にあたる)は、あらためて読み返してもじつにスリリングだ。

本作の基本フォーマットは「街のおかしい人やおかしいモノ」を作者目線でおもしろがりつつ紹介していくタイプのルポルタージュ。
それほど珍しくないテーマにもかかわらず、「作品」として一線を画した読み応えがあるのは、素材のよさに加えて、作者のスタンスが、いわゆるユーチューバー的(もしくはブロガー的)な「やってみた」系とは似て非なるモノ、というのもあるだろう。

この手の取材は対象と距離を置きまくったほうが楽だしスマートなのは百も承知で、作者がとるのはひたすらその逆。長期にわたる取材の果てにミイラ取りがミイラになっただけではあきたらず、ピラミッドに登ってわざわざミイラ音頭を踊り続けているような風情がたまらない。
人智を超えた交友関係の積み重ねによって、それまで大笑いして読んでいたハズの「ペイティさん」のふとした仕草に深いブルースを感じる瞬間ができたりするあたりは、エッセイマンガジャンルのひとつの到達点といっても過言ではないだろう。

筆者は、本作がスタートする前(10年以上前になる)、作者に取材させていただいたことがあるのだが、雑談のなかで「近所に変な居酒屋があるんですよ~」と聞いた覚えがある。
振り返ればあれこそがすべての源である「居酒屋ちから」とのなれそめだったのかも……と思いつつ、現在進行形でどんどんルポが続いているので、特に感慨深くならないあたりも、いい塩梅だと思う。



<文・大西祥平>
漫画評論家、ライター、漫画原作者。著書に『小池一夫伝説』(洋泉社)、シリーズ監修に『ジョージ秋山捨てがたき選集』(青林工藝舎)など。「映画秘宝」(洋泉社)誌ほかで連載中。

単行本情報

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