『ポム・プリゾニエール La Pomme Prisonniere』
鶴田謙二 白泉社 \1200+税
(2014年12月25日発売)
寡作で知られる鶴田謙二の、待ちに待たれた最新作は、「廃墟」「猫」「裸女」をモチーフにした、セリフが極端に少ない寓話のようなショートストーリー集。
自由で奔放、気ままな猫のよう。そんな鶴田作品では毎度おなじみのかわいい黒髪ストレートヘアーの女の子が、見渡すかぎりの海原にぽっかり存在する廃墟のなか、はだかで、猫と戯れる。
ちょっとだらしなくって、酔っぱらった様子がとことん魅力的。そんな女の子が、異国情緒あふれるベネチアの町で、霧のなか、素っ裸で踊ったり、猫と寝転んだり。
だいたいはだか、ほとんどはだか、ひたすらはだかで、ゲシュタルト崩壊!! もはや「裸族」のはだか描写にエロさはないけれど、フェチズムはあり、まさに「裸女」という言葉がぴったり。
猫とトンネルを歩き、猫のために海に潜り、猫にひっかかれ。ストーリーはそんなものなのに、目が離せない。とまあ、そのようなマンガなんであります。
整えすぎもラフすぎもしない美しい線で描かれる魅力的な女の子、猫好きにはたまらない躍動感ある猫、まるでカメラワークのように流れるコマ割りも美しく、ファンはもちろん、鶴田作品未経験のかたもこの機会に、はまるも八卦、はまらぬも八卦、読んでみてはいかがでしょう。
「楽園 Le Paradis」にて発表された「ひたひた」シリーズを中心に、描きおろしを加えてまとめられたもので、中村明日美子、沙村広明、木尾士目、石黒正数、寺田克也によるオマージュイラストやコメントも寄せられており、お得な内容になっていますよー。
<文・かとうちあき>
人生をより低迷させる旅コミ誌「野宿野郎」の編集長(仮)。野宿が好きです。だらだらしながらマンガを読むのも好きです。