『春風のスネグラチカ』
沙村広明 太田出版 \780+税
(2014年7月10日発売)
ひとりでは動かすことができない車椅子に乗った、両足義足の少女。それを押すのはほとんど話さない片目の従者。
2人はとある屋敷へ、危険を犯して入ろうとする。それはいったいなぜなのか?
ロシア革命によって帝政ロシアから共産主義ソヴィエトへと激変した時代をえぐる、ミステリーである。
この時代のソヴィエトは何もかも不安定。極寒のこの国は不透明なことが多く、序盤は「なぜこの少女はかたくななのか」というキャラの心理から、「ソヴィエトは今どこに向かおうとしているのか」という国策の部分まで、わからないことだらけだ。
この両方がつながって、後半一気に謎が解けていく。次から次へとたたみかけるように、いまだに謎多き歴史ミステリーの解読と推理が、作者によって行われる。
ロシア革命の知識なんてなくてもいい。国家レベルの数多くの謎が、足のない少女と従者の物語にすべて収束していく様は、ぜひ読んで確かめてほしい。
女体描写に定評のある作者。力あふれる少女の瞳と、両足のない裸体は、息を呑むほど美しい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」