集英社文庫『ジャングルの王者ターちゃん』第1巻
徳弘正也 集英社 \600+税
1918年1月27日は、アメリカで映画『ターザン』の第1作目が封切られた日である。
『ターザン』はエドガー・ライス・バローズの冒険小説を原作とする映画シリーズだ。ターザンは由緒正しい英国の家系に生まれたものの、アフリカに置き去りにされ、ジャングルで育った。野生児ターザンが未開の地で活躍する冒険活劇は広く大衆に支持され、プログラム・ピクチャーとして続編シリーズが無数に作られた。
そんな『ターザン』シリーズのパロディといえば、「週刊少年ジャンプ」で連載していた徳弘正也『ジャングルの王者ターちゃん』が忘れられない。
ジャングルの平和を守るターちゃんと、元トップモデルの鬼嫁・ヂェーン、ターちゃんを育てた親代わりのチンパンジー・エテ吉らが、アフリカの動物たちとドタバタを繰り広げるギャグマンガだ。
下品な下ネタをこれでもかとオンパレードする徳弘節がハマりにハマり、連載開始当初は1話あたり7ページとボリュームが少なかった(「ジャンプ」のギャグマンガ枠の伝統。現在連載中の仲間りょう『磯部磯兵衛物語 ~浮世はつらいよ~』の1話分も、同ページ数)が、途中から通常の作品と同等のページ数になり、タイトルも『新ジャングルの王者ターちゃん』に改題された。
なお、『新』になってからは、従来の1話完結型のギャグマンガから、シリーズ構成のバトル路線へと大きく舵を切る。
作品の性質は大きく変わったが、それでも人気は持続し、ついにはアニメ化(ターちゃんのCVは俳優の岸谷五朗!)もされた。「ジャンプ」600万部の黄金時代を支えた珠玉の作品群のひとつである。
とはいえ、路線変更後も徳弘節は相変わらず。当時リアルタイムで読者だった人に印象を聞けば「おもしろくて、エロかった」と答えるのだから、それがこの作品に対する最大の賛辞ではないかと思う。
ストーリーがシリアスに傾くと、とたんにコメディ・リリーフとして下ネタが挿入され、このあたりのシリアスとギャグのバランス感覚が、のちの徳弘作品(『狂四郎2030』や『亭主元気で犬がいい』など)にも息づいている
ちなみにアニメ版は、3月にデジタルリマスター版DVD-BOXの発売が予定されている。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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