『私を連れて逃げて、お願い。』第1巻
松田洋子 KADOKAWA \640+税
(2015年1月24日発売)
「つまらん知恵も色気もつけるな。女は太ったほうがいいに決まってるんだ」
厳しい門限、服は決められ、朝から山盛りの食事……。
「あなたのため」と同居する祖父母に徹底的に管理されて育った女子大生の日芽(ひめ)は、ひとりの友達もおらず、王子様が自分を迎えにきてくれるのを、本気で待っている「痛い」女の子。
そこに現れたのが、王子様の格好をした、怪しい劇団の役者である央治(おうじ)。
イケメンであることを除けばなんのとりえもない彼は、育児放棄をされてテレビを見続けた結果、テレビに出ることだけが望みの、これまた「痛い」男の子だ。
そんな2人が「ボーイ・ミーツ・ガール」して、央治が犯罪に手を染めたために「逃避行」。その間に様々な出来事がおこる「ロード・ムービー」風の物語になっている。
なんて書いてみると、とてもベタだけれど、ベタを突きつめて「人間の〈業〉や〈毒〉を描かせたらこの人!」な、松田洋子の手にかかると――。
どーんと欠落のある2人に、祖父母やシスター姿の怪しい団長、逃亡して入ったラブホテルのおばさんなど、出てくるわ、出てくるわ、「因業な人たち」のオンパレード。
全員が好き勝手、饒舌にしゃべりまくり、シリアスながらコメディに。「痛い」けれど、いっそすがすがしさまで感じさせる、とんでもない物語になってしまう!
2人は恋人同士になれるのか? 逃避行の結末は?
絶対、幸せな結末にはならないだろうと予感させながらも、一度読んでしまうと、もう、目が離せません。
<文・かとうちあき>
人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』の編集長(仮)。野宿が好きです。だらだらしながらマンガを読むのも好きです。