『【1型】~この赤ちゃん1型糖尿病です~』
山田圭子 秋田書店 \840+税
(2015年2月16日発売)
糖尿病というと、多くの人は「生活習慣病」を思いうかべるかもしれないが、食習慣などとはまるで関係なく発生する糖尿病もある。
それが「1型糖尿病」と呼ばれるもの。作者の肉親はこれを小学6年生のときに発症しており、執筆に際してはその本人からも綿密な取材をした模様。
病気についての正確な知識はもちろん、なによりそうした病気を抱えた子どもの気持ちがしっかりと描きこまれていて深い読みごたえとなっている作品だ。
物語は、小学6年生の愛(めご)が新しい学校に転校してくる場面から始まる。愛は、赤ちゃんの頃に1型糖尿病と診断された少女。
体育の授業も問題なく参加はできるものの、1日5回のインスリン注射は必須。肌身離さず持ち歩く、血糖値を保つための注射キットはまさに命綱だ。
彼女は3歳のときから自分で血糖値を計り、インスリン注射をおこない続けてきた。しかし、病気に関してよく知らない子どもたちにとっては注射をうつ姿が異様にうつり、心ない陰口をたたかれることにも……。
なんとか周囲に理解してもらおうとする愛の姿を、複雑な想いで見つめる少年がいた。
同じクラスの藤林は、クラス委員でモテモテのイケメン少年。少し前に愛と同じ「1型」を発症していたのだが、それを周囲に言えずにいたのである。
心配する母に説得され、情熱を注いでいたサッカークラブをやめることになったが、本当の理由を仲間に言うことができずにひとり苦しんでいた……そんな彼が、愛の言動にいらだちを感じながらも次第に“病気”の自分をうけいれていく様に心打たれる。
1型糖尿病は10万人にひとりといわれる病気だが、このようによく知られていない病気は数多くある。少しずつでもこうした症例を理解していくことは私たちの務めであるはず。
知識の共有に役立つこのようなマンガの存在は非常に貴重である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」