『響 小説家になる方法』第1巻
柳本光晴 小学館 \552+税
（2015年2月27日発売）

文芸誌「木蓮」の若き編集者は、新人賞宛に届いた一編の小説にかつてない胸騒ぎを覚えた。
文芸の現在を憂える彼女は、入社以来ずっと待っていたのだ……小説の力で世界を変えてしまうようなスターの到来を!!

その作品の送り主は、高校1年生の鮎喰響（あくいひびき）。
おしゃれに興味はまるでなさそうだが、教室でひたすら読書に没頭する眼鏡の奥の瞳は毅然とした美しさを備えている。

いやはや、なんとも強烈なヒロインだ。高校生活が始まったばかりだというのに、周囲と交わろうとする気配はゼロ。響のすべてを受容し、保護者のように彼女をフォローする幼なじみの涼太郎には、ややツンデレ的なかわいらしさを見せるものの、世の中を敵視するというよりほとんどのものが眼中にないといった雰囲気だ。
部室をたまり場にしたいがために文芸部に籍を置いていた不良どもと渡り合うシーンもゾクゾクする!!

物語の軸となるのは「創作とはどういうことなのか」という問いかもしれない。
響の素質を認めつつも、内心「彼女が小説家になったとしても幸せな人生を送れるとは思えない」と懸念する涼太郎。
見た目はギャルの文芸部長のキャラクターも興味深い。片手間で小説を書いてみたりしているような風を装いつつ、実は並々ならぬ自尊心を抱えていそうな彼女が、響にどんな感情を抱いていくのか。

そして、響が「木蓮」に原稿を送ったとき、連絡先を記さなかったのはどういう意図なのか……“小説家をめざす少女の成長物語”などという言葉ではまったく言い表せない本作の行く先が、非常に楽しみだ。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」