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『衛星ガール』第1巻 穐山きえ 【日刊マンガガイド】

2015/09/21


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは『衛星ガール』


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『衛星ガール』第1巻
穐山きえ 講談社 ¥565+税
(2015年8月6日発売)


理系女子は、魅力的だ。

オトコノコのドリームでもある、ロケットやロボットに夢中な姿。のめりこんでいきいきと実験や電子工作に挑む様子。
そりゃあ仲良くなって、科学の話をしたくもなりますよ。

このマンガで扱われている題材は、人工衛星。とは言っても、大学生が自費で宇宙まで飛ばせるわけはない。
「カンサット」と呼ばれる、空き缶型の人工衛星。缶のなかに、衛星の基礎パーツになる電源、通信、GPS、カメラ、センサーなどを組みこみ、小型のロケットやバルーンからパラシュートをつけて投下する、というもの。現在は日本で実際に、カンサットの大会も行われている。
空き缶ひとつのなかに、どれだけ機能と想像力を組みこめるのか。
天高くは飛ばない。だが自分たちの手で完成させ、オリジナリティを組みこめるのが魅力だ。

主人公の穂積恒治郎は、響工業大学工学部機械学科に入学した1年生。
本当は、理学部の天文学科に行くのが夢だった。ロケットや人工衛星にあこがれていた。でもそれでは飯は食えないから、と意を決して工学部に進んだ。
そこで出会ったのが、神尾晶という天真爛漫な女子。敷地内を駆けまわってカンサットを打ち上げている。

晶は天才的な頭脳の持ち主で、一度見たものをすべて覚えてしまうことができる。
じゃあなぜもっと他のこと……たとえば本物の人工衛星研究にいかないのか?

彼女は、カンサットが好きなのだ。晶は父の言葉を恒治郎に語る。
「理学部が目指すのは 未知なる宇宙 工学部が目指すのは 手の届く宇宙」
彼女は、自分の手で作った人工衛星を、自分で動かしたいのだ。この快感に取り憑かれたのだから、誰にも止めることはできない。

カンサット打ち上げのシーンは、とても地味だ。なにせただの空き缶だから。
しかしこの小さな空き缶に、自分たちが今できる限りの技術と想像力を詰めこんで、自分の手で飛ばす。
晶と恒治郎の笑顔こそが、一番のクライマックスだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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