『恋するエジソン』第1巻
渡邉築 集英社 \400+税
1879年の10月21日は、あの発明王ことトーマス・エジソンが白熱電球を一般に公開した日。
つい最近、青色LEDの発明で中村修二、赤崎勇、天野浩の3氏がノーベル物理学賞を受賞したことが話題となったばかりだが、光技術の革命は、人類の生活に大きく関わる大発明なのである。エジソンの数々の発明のなかでも、やはり白熱電球は最大に評価されてしかるべきものだろう。
しかし、かつては少年向け伝記のド定番と言うべきポジションだったエジソンだが、どうも近年のマンガにおいては悪役としての登場が多い。
その元凶(?)は、荒木飛呂彦と鬼窪浩久による『変人偏屈列伝』の一遍、ニコラ・テスラのエピソードに登場する、異常に嫉妬深いエジソンかもしれない。ほかにも久正人の『ジャバウォッキー』には、他人を蹴落とすことに「99%の努力」を費やすという、これまた極悪なエジソンが登場するなど、昨今のマンガの世界では「邪悪なエジソン」がトレンドなのだ。
そんななか、久しぶりにクリーンなエジソンが登場するのが『恋するエジソン』。「エジソンの知識がすべて詰めこまれたネジ」が頭に埋まった女子高生・松中スピカの珍発明によって起こる騒動を描くドタバタギャグだが、ここでのエジソンは邪気ゼロ!
しかも単行本の表紙には、どの巻にもひらめきの定番表現でもある白熱電球が描かれているのだから、今日のお題(エジソンが白熱電球を発明した日)には最高にふさわしい作品だ。そしてなによりまず、ヒロインの一途さからくるキュートな魅力は、ぜひ多くの人に知ってもらいたいところ。
もっとも、彼女が「発明モード」に突入すると、顔がエジソンになってしまうという、まったくうれしくない形で、本作にエジソンは登場するのだが……。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。