『レイチェル・ダイアル』第2巻
皿池篤志 集英社 \562+税
(2014年8月20日発売)
皿池篤志のレトロフューチャーSF『レイチェル・ダイアル』が2巻で完結した。1巻はかなり評判がよかったので、急な完結には少々驚いているが、この先の発展的な展開に期待したい。
主人公は、勝ち気でおてんばなロボット企業の令嬢レイチェル。8歳のときに起こった出来事をきっかけに、金属回収用のアンドロイドだった金髪のアレックスと黒髪のマックスをお供にすることに……。
この3人の関係性が心地よい。お互いにベタベタと依存するのではなく、それぞれが別の方向を見て行動しながらも、深い部分では信頼し合っている。そんな“バディもの”のよさが存分に発揮され、読んでいて温かい気持ちになるのだ。
2巻では、成長してエンジニアの資格を取得したレイチェルが、生家を出てロボット修理屋をオープンしたところから始まる。そして終盤は、大団円と銘打たれているように、粛清された兵器会社を巡って物語は壮大になり、3人の絆もいっそう強まってエンディングを迎える。
正直を言えば、世間知らずなお嬢様とイケメン2人の商売繁盛記をもっと読みたかったところだが、それはまたいつの日にか。読めば必ずレイチェルたち3人のことが好きになる。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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