『パーツのぱ』第1巻
アスキー・メディアワークス 藤堂あきと \780+税
9月28日は「パソコン記念日」。
1979(昭和54)年のこの日、NECが一般ユーザーにパソコンが普及するきっかけとなった「PC-8001」を発売したことに由来する。10年前、5年前を振り返ってもその性能の差を感じるあたり、パソコンの進化の目覚ましさに今さらながら驚かされる。
『パーツのぱ』は、秋葉原にある小さなパーツショップ「こんぱそ」を舞台にした物語。「週刊アスキー」で2007年から2014年にかけて連載された作品だ。パソコンに詳しい人にとっては、この間約7年のパソコン事情の変遷も興味深く読めるはず。
とはいえ個性豊かな店員たちの人間ドラマを軸としているので、パソコンに明るくない人でも十分楽しめる! 作家の語りのうまさゆえ、むしろ読んでいるうちに知らないパーツのこともなんとなくわかったような気すらしてくる。
また、大型店はもちろん、たくさんのライバル店がひしめく電気街で「こんぱそ」がどんなふうに商売していくのかといった楽屋裏のあれこれも楽しみどころ。
こじんまりとしたショップの日常を描きつつも「いつまでも変わらない物語」ではなく……一話一話は短いながらに、時の流れを感じさせるドラマ性も高い作品だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」