『銀河帝国興亡史 ファウンデーション』第2巻
アイザック・アシモフ(作) 久間月慧太郎/Seldon Project(画) 岡部宏之(訳)
サイドランチ \900+税
(2015年2月19日発売)
本作は「SF界の巨人」とも言われるアイザック・アシモフの代表作のひとつである『ファウンデーション』シリーズを、原作にかなり忠実にコミカライズしたもの。
原作小説は、この単行本のオビにも「SF叙事詩の原点にして教典」と謳われるような、まぁ言ってみれば「読んでないとSFファンと名乗るなかれ」的なポジションの作品なワケです。
しかし、これがいざ読もうと思うと「長い」「なんか小難しそう」といった心の壁を超えられなくて、なんとな~く敬遠している人も少なくないことでしょう。
そんな人には、このコミカライズ版はまさにピッタリ。『三国志』などといっしょで、マンガで読んでみたら「あれ? メチャクチャおもしろいし、べつに難しくないよ!」とおそらくなるであろう物語なのである。
どういった話なのかといえば、未来の宇宙で銀河帝国が栄えて滅びる(要するにタイトルのままの内容)長~い物語なのだが、じつはひとつひとつのエピソードは独立した短編~中編作品となっている。
なので、この世界は宗教と原子力によって人々の生活や繁栄がコントロールされているという基本的な設定さえ頭の片隅に置いておけば、意外なほどサクッと読めてしまう。
たしかに、第1巻は説明事項や預言的な内容が多く、ちょっとばかし頭に入りづらいところもあるのだが、この第2巻になれば、したたかな貿易商人が強欲な政治家にどうやって原子力を売りつけるかという、スリリングな駆け引きをワクワクしながら楽しむことができる。
おそらく敬遠している人が勝手に想像しているであろう、ムズカシイSF用語などはまったくと言ってもいいぐらい出てこないので、“食わず嫌い”のままスルーすることなかれ。
原作小説ではここから先、さらにミステリー的な要素も加味されたエピソードも入ってくるので、コミカライズのつづきも待ち遠しいところ。
そして待ちきれない人は、いっそ先に小説を読んじゃいましょう! 原作を手に取るハードルを下げるというのも、このコミカライズの重要な役割だと思いますので。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。