『ワタシとこどもの14章』
いがらしみきお 朝日新聞出版 1,200+税
(2015年3月6日発売)
季刊の教育情報誌「AERA with Kids」にて2006年より連載中のフルカラーエッセイマンガの待望の単行本化。
作者は『ぼのぼの』などで知られる鬼才・いがらしみきお。
いがらしの作品には、初期作に代表されるブラックなものと、『ぼのぼの』のような「ホワイト風ブラック」なものとがあるが、後者に属するだろう本作で切り込んでいくのは、掲載誌名と書名が示すとおり「子育て」、ひいては「家族」という身近ななものでありながら、とらえどころのない人間関係だ。
いがらしの目を通すと、家族という集団はどのように見えてくるのか。そして(ディス)コミュニケーションを主題にマンガを描いてきた作家が、いかに自身のコミュニケーション体験をフィクション化するのか。
家族ものが生む、笑いとささやかな感動以外で、ぜひとも注目してほしいポイントだ。
そしてもう1点。タイトルには「14章」とあるが、これは全14話ということではなく、1話あたり見開き1ページ14コマであるところから来ている。
この変則的な構成で、いったいどんな物語がどのようにつむがれるのか。
ときに4コマの基礎的な形式とまことしやかに言われがちな起承転結を、初期作品から完全に解体してきたいがらしだからこそ、4コマならぬ14コマへのアプローチ方法も見逃すことはできない。
<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
「アニメルカ」