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『三国恋戦記 ~籠中の鳥~』第1巻 Daisy2(作)あず真矢(画)【日刊マンガガイド】

2015/04/05


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『三国恋戦記 ~籠中の鳥~』第1巻
Daisy2(作)あず真矢(画) マッグガーデン \571+税
(2015年3月14日発売)


三国志によく似た世界のなかへ入り込んだ少女。彼女は英傑たちと日々を過ごし、やがて恋を知る――。
人気を博した恋愛アドベンチャーゲームのコミカライズ第2弾。

主人公・山田花は、普通の女子高生。図書室で本を読んでいるうちに、気がつくと見知らぬ山のなかにいた。
軍師・孔明の導きにより、彼女は玄徳軍に拾われる。孔明の弟子と見なされた花は軍師となり、玄徳軍と行動をともにすることになるのだ。

ある日、川に流されてしまった花を助けたのは、大陸最大の覇権を握る曹孟徳。
本を孟徳に取り上げられてしまったのもあって、玄徳軍を離れ彼のそばにいるうちに、次第に孟徳のやさしさに心惹かれていく花。そして孟徳も、花をとても気に入ってくれる。
しかし本には、孟徳が赤壁の戦いで大敗することが書かれていたのだ。

戦いを止めたい。犠牲を減らしたい。
その一心で花はあれこれと画策するが、その甲斐もなく赤壁の戦いは起こり、本のとおりに孟徳軍は破れる。
しかし孟徳は無事生き長らえ、やがて花は彼の妾となり、ほかの女性たちとともに孟徳の本邸に住むことになるが――。

さてこの物語、秀逸なのは主人公の立ち位置だ。
一介の現代の女子高生が、戦乱のなかで軍師として行動するのは至難の業。だが、紆余曲折はあれども、それができてしまうのだ。
それは、戦いの行方を見せてくれる不思議な本の力によるところが大きい。
主人公はその本の力で異世界に来たわけだが、さらに太平道のいる10年近く前にタイムスリップしたりもする。過去に行くことで、英傑・孟徳の違う顔も見えたり、さらに接近することができたり、逆に彼の恋人を知ってやきもきしたり……と、ストーリーも膨らむ。

ゲームプレイ時から感じていたことだが、その使い方やバランスが巧妙で感心する。よい小道具の用い方だと思う。
だが、道具の力だけではない。主人公の山田花自身の力も大きい。
花はまっすぐに努力する、誠実な性格。努力もするし、人との接し方もほどよく明るく、読者(もしくはゲームユーザー)に反感を買うことは少ないだろう。
乙女ゲームは主人公キャラのできいかんで楽しさも変わるが、花の設定は非常にセンスがよく、それはもちろんこのマンガにも活きている。

当時、孟徳ほどの立場だと、たくさんの妾を持つのが当たり前。しかし花は彼女らにいびられることもなく、文字を教えてもらったり、和気あいあいと女子会したりなんかして、和やかな雰囲気。
そのへんも、このマンガはうまい。戦の日々で重くなるはずの物語も、描きようによってはとんでもなくヤンデレに見えるはずの孟徳の二極性も、明るい描き方で救っている。

第1巻では花は恋に疎く、孟徳のことを好きではあっても、まだまだ本気ではないように見える。さて、この先どうなるか……?
原作ゲームプレイヤーの方は結末をご存じかとも思うが、マンガで描かれるストーリーも楽しみに追っていきたいところ。

なお、花が玄徳軍で過ごす日々や、孟徳と知り合うまでのことは、前作『三国恋戦記 ~オトメの兵法!~』に詳しい。未読の方は、ぜひこちらもどうぞ。



<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」

単行本情報

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